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アイバーン

豊緑の神秘

キノコの賢さにはいつもびっくりだよ…

「豊緑の神秘」の名で広く知られるアイバーン・ブランブルフットは、ルーンテラの森を渡り歩きながら行く先々で生命の種を蒔く、奇妙な半人半樹である。彼は自然界の秘密に精通しており、ありとあらゆる草木、花鳥、昆虫たちと深い友情を結んでいる。アイバーンは荒野をさすらい、出会うもの皆に奇妙な知恵を授け、森に滋養を与え、時には口の軽いチョウチョを信用して秘密を教えてしまう。

フレヨルドの歴史がまだ浅かった時代、アイバーンは鉄の意志と揺るがぬ決意を備えた勇猛な戦士だった。しかしアイスボーンと呼ばれる種族が興隆すると、アイバーンの一族を「自分たちに逆らおうとする哀れな定命の者」と見下す彼らに対し、彼は無力だった。アイバーンは同族の者たちと共に、魔力を持つ圧制者たちの支配を転覆させるための策を練った。「残酷なアイバーン」が率いる歴戦の軍団は、凍てついたフロストガードの泊地から帆を掲げ、あらゆる魔力の根源であると伝説で語られる、はるか遠くの地を目指した。その力を己のものにできたなら、アイバーンはアイスボーンを打ち破れるだろう。水平線を越えていった船団は、やがて人々の記憶から消え、伝説の仲間入りをした。そう、二度と戻らなかったのだ。雪に刻まれた足跡のように、彼らはフレヨルドの歴史から姿を消した。

崇高な目的のため突き進む船団に海は大波の牙を剥き、男たちの闘志を揺るがした。翻心した臆病者たちを何人も剣にかけたアイバーンは船団をアイオニアの海岸に上陸させ、抵抗する地元民を無慈悲に切り捨てていった。アイオニア人たちは降伏し、フレヨルド人たちを「オミカヤラン(世界の中心)」の名で知られる神聖な木立へと案内した。アイバーンの手勢のほとんどは、これを征服者に対する恭順を示す贈り物だと受け取った。だが、その奇妙な緑の園で彼らは激しい抵抗に遭った。

謎めいた新たな敵が現れた。半人半獣の怪物たちが次々と物陰から襲いかかり、征服者たちの軍勢を少しずつ削いでいった。それでもアイバーンは退かずに戦い続けた。やがて傷だらけのわずかな軍勢の生き残りは、アイオニア人たちが極めて神聖なものとしていた「カミヤナギ」――金緑の光で煌く長い糸葉をそよめかす巨木を発見した。敵の最後の襲撃によって手勢を皆殺しにされる間、アイバーンはその神秘の大樹に心奪われ、立ち尽くした。しかしやがて、敵の戦意を挫かんと、彼は戦士十人にも匹敵する力で、握りしめた戦斧を大樹に叩き込んだ。だが、その手には何の衝撃も感じなかった。何の感覚も。彼が感じたのは、カミヤナギを切り倒しその生命を終わらせた瞬間に溢れ出た、ただ目の眩むような光だけだった。

次に起こったことは、さらに奇妙だった。彼の両手は握った戦斧、そしてカミヤナギの堅い樹皮と融合し、一つとなったのだ。手足はぐんぐんと伸び、ゴツゴツと節くれ、ざらざらとした手触りになった。全身が変容していく間、彼はなすすべもなく立ちすくんでいた。ほんの数瞬のうちに、彼の体は高さ3メートルにまでなり、死んでいった仲間の死体の山を見下ろしていた。もはや自分の心臓の鼓動は感じられなかったが、覚醒した意識がそこにあった。

自分の中から声が響いた。「見よ」

ほんの数秒と感じられる時間の中で、仲間たちの死体は色とりどりのキノコと群がる虫に覆われ、腐っていった。その肉は腐肉食いの鳥やオオカミの糧となり、骨は分解されて土を肥やし、そこには征服者たちが貪った果物の種が芽吹き、やがてその果実をたわわに実らせる木々へと育っていった。丘が盛り上がり、またならされていく様は、穏やかに呼吸をする誰かの胸のように見えた。まるで色鮮やかな心臓の鼓動のように、葉や花弁は刻々と色を変えた。彼の周りに積み上げられた数多くの死から、信じられないほど多くの生命が脈動する様を、彼は目の当たりにした。

それは、アイバーンがその人生で見てきた何よりも美しい光景だった。生命はあらゆる形をとり、あり得ないほど複雑な結び目のように互いに絡まり合い、求めあうように繋がっていた。自分の犯してきた過ちを、他人に叩きつけてきた残酷さを振り返ると、怒涛のように後悔と悲しみが沸き起こった。

アイバーンがすすり泣くと、樹木のようになった彼の体を覆う樹皮と葉には、露のような涙が浮かんだ。自分はカミヤナギになったのだろうか?彼は自問した。

再び、内なる声が聞こえた。「聴け」――アイバーンは従った。

最初は、何の音も聞こえなかった。やがて……数えきれない獣たちの嗚咽に、河川の怒声に、木々の哀号に、苔がこぼす涙の音にアイバーンは気付いた。それはカミヤナギの死を嘆く哀悼の交響曲だった。彼は良心の呵責に赦しを乞うて泣き叫んだ。すると、小さなリスが彼の脚に身を寄せてきた。彼は近くにいる動物たちの視線を感じた。植物たちはその根を彼の方へと差し伸べた。大自然に見つめられ、彼はそこから温かな赦しを感じた。

アイバーンがついに動き出した時には、すでに一世紀が過ぎ去っており、世界は新しいもののように感じられた。かつての自分自身の暴虐と残酷は、心の奥の残響となっていた。多くの破壊をもたらしていた昔の自分には決して戻るまい。しかし――内なる声に問いかけた。なぜ自分なのか?なぜ自分は赦されたのか?

三たび、声が響いた。「育てよ」

彼は戸惑った。彼自身に育てと言っているのか、それとも世界を育てる助けをせよと言っているのか?おそらく両方だろう――そう受け止めた。それに、もう少し育ったとしても悪いことはないし、むしろ何かの役に立つのではないだろうか?アイバーンは見下ろしてみた――自分自身を、樹皮のような肌を、腕に生えたキノコを、かつて剣を佩いていたあたりに住み着いているリスの一家を。この新しい肉体は、まさに驚異だった。爪先で深く土を掘ると、根や虫たちと話ができることに気付いた。土さえも、自分自身の意見を持っていた!

アイバーンは、この世界の住人全てと友達になることが素晴らしい始まりになると心を決め、それを行動に移した。これには数世紀がかかった。アイバーン本人にさえ、はっきりとした長さはわからなかった――楽しい時間というものは、飛ぶように過ぎていくものだ。彼は世界をさすらい、大きな生き物から小さな生き物まで、ありとあらゆるものと親しい友情を結んでいった。相手のお茶目な欠点を観察し、ちょっとしたクセに喜び、困っていれば手を貸した。シャクトリムシに近道を用意したり、いたずらなブランブルバックとふざけたり、トゲトゲのエルマークの肩を抱いて元気づけたり、歳を重ねたシワシワのキノコと共に笑った。アイバーンの行くところ、森は常春のように花開き、獣たちは調和の中で暮らした。

時には無分別な肉食獣によって意味もなく痛めつけられた生き物を救った。一度など、傷ついたストーンゴーレムを見つけたこともあった。その哀れな生き物が死にかけていることに気づくと、彼は川の小石から新しい心臓をこさえて彼女に与えた。あらゆる無機物生命体の例に漏れず、そのゴーレムはアイバーンの生涯の友となった。アイバーンは彼女を「デイジー」と名づけた。彼女の石の体から不思議にも芽生えた花の名前だ。今では、アイバーンが危機に陥った時に彼女は全速力で駆けつけてくれる。

彼はしばしば人間の集団と遭遇したが、その大半は概ね平和的であった。人々は彼を「ブランブルフット」または「豊緑の神秘」と呼び、彼の奇妙な慈愛について物語った。だが、自らが与える以上に奪い、どこまでも残酷になれるという悪い意味での人間らしさに心を乱されたアイバーンは、彼らから距離を置いた。

その時、内なる声が四たび語りかけた。

「示せ」

アイバーンは森を後にし、人間によって支配された世界へと旅立った。かつて彼が持っていた固い意志が蘇ったように感じられたが、それはもう悪意や残忍さに突き動かされたものではない。いつか、自分が奪ってしまったものの代わりになりたい、彼はそう望んだ。彼が新たなるカミヤナギと呼ばれるには、人類を啓発し、彼らが見て、聴いて、育っていくよう導かなければならない。かつて人間だったからこそ、アイバーンはそれがどれほど困難であるかを理解していた。だからこそ、彼は微笑み、最後の太陽が沈むその日までにこの使命を成し遂げようと誓いを立てた。残された時間はまだ長いのだから。

毒の贈り物

ほとんどの人間にとって、百年というのはとても長い時間だ。一世紀あれば、世界中を探検したり、何千もの人々と出会ったり、数えきれないほどの芸術作品を完成させられるだろう。だから普通は、一世紀以上も一か所に突っ立っているなんてとんでもない無駄だと考えるに違いない。だがその一見無駄な時間で、アイバーン・ブランブルフットは誰も想像できないほど多くのことを成し遂げていた。

例えば彼は、地衣類の群体とその大家であるところの岩の間で長年続いてきた紛争を解決したり、冬のリスが秋に無くしたドングリを見つけるのを何世代にもわたって繰り返し手助けしたり、かつて自分の遠吠えを「まるで金切り声」と馬鹿にされたのを理由に群れを離れたはぐれ狼を説得して仲間の元に戻れるようにしたりした。

アイバーンの爪先は表土の下まで入り込み、用心深い塊茎と我が道をゆくミミズとの間を縫って古木たちの根と絡み合い、彼の周囲の森には花が咲き誇った。もちろん他にもまだまだ成し遂げたことはあるが、これらの例だけでも彼の一世紀分の仕事がいかに充実していたかの証明には十分だろう。

何もかも順調だった…… 森の端で行われている不穏な出来事についてサッサフラスが呟き始めるまでは。

狩人だ!その根を通じて彼らは叫び、実に森全体の半分を警戒させた。

サッサフラスはシオマイマイが少々道を逸れただけでもパニックで全身の葉を逆立てるほど神経質な木々であることをアイバーンは知っていた。それに生命の環に無駄なことや無意味なことなどないのだから、狩りはそこまで悪いことではない。だがサッサフラスのせいで不安になったコマドリがチョウに相談し、チョウが秘密を知ってしまった以上、森全体にそれが広まるのは当然の成り行きなのだ。

そこでアイバーンは立ち上がった。彼はそのせいで先祖代々の我が家の住所が変わる羽目になってしまったハサミアリのコロニーを手早くなだめると、いくつもの固い樹皮の層を振り落としながらゆっくりと歩きだした。森の中、一歩足を進めるごとにその周囲は花満開となったが、警戒の度合いもまた次第に強まっていく。

奴らは三人だ、とリスたちが話し合っていた。

双子の赤い月みたいな目をしてた、とスカトルガニが川の中に隠れながらまくし立てた。

エルマークよりも血に飢えてるぞ、そうエルマークたちは主張した。

ハヤブサたちは、狩人が自分たちの卵を盗みに来たと言い張った。象牙のようにつややかなキクはその見事な花弁を心配し――自分に咲く花々を溺愛するデイジーをうろたえさせた。そういった皆をアイバーンは一人ひとり落ち着かせ、災難が通り過ぎるまで身を隠すよう促した。デイジーが追ってきているのには気付かないふりをした。彼女は自分の抜き足差し足がとても上手だと思っているから。

八本牙のシャグヤクが、草地で死んでいた。その首の付け根の分厚い筋肉のコブは三本の矢に貫かれていた。アイバーンの目から樹液の涙が零れ落ちると、彼がミッカスと名付けたリスが「豊緑の神秘」の胸を駆け上がって、慰めるようにその頬をぬぐった。「狩人は食べるために肉をとる」アイバーンは大声で言った。「狩人は骨を削ってオモチャや道具を作る。狩人は毛皮を縫って服を作り、皮をなめして長靴を作る」

「狩人は食べるために肉をとる」アイバーンは大声で言った。「狩人は骨を削ってオモチャや道具を作る。狩人は毛皮を縫って服を作り、皮をなめして長靴を作る」

死体からは、その八本の真珠色にきらめく牙が消えていた。アイバーンが大地に触れると、死んだシャグヤクの周りにデイジーの花が輪になって咲いた。彼は幼いイシウロコクサリヘビが這いずり去っていくのを見た。イシウロコクサリヘビは歳のわりに賢いのだ。

「シシシシシシシんぱい」ヘビはしゅうしゅうとささやいた。

ヘビたちがそのドモリを恥じ、長いことサ行の音を含む言葉を避け続けていたことをアイバーンは知っていた。そこで彼はヘビたちに、最も恐れている言葉を受け入れるのだ、と促したところ、彼らはその教えを心に刻み込み、今ではサ行で始まる言葉だけで話すようになっていた。

ヘビというのは、実に頑張りやだ。

「もう心配はいらないとも、おチビさん」この可哀想な子は惨劇のすべてを目撃したに違いない。「ここにとぐろを巻いて、シャグヤクを見ていておくれ」アイバーンは幼いヘビにそう頼んだ。「この件を最後まで調べたら、戻ってくるよ」

一歩進むごとにシャグヤクの牙が絶え間なく音を立てるため、次の獲物を警戒させないよう、リズベルはしょっちゅう足を止めて牙の束をまとめ直さなければならなかった。上流に持って行けばこの牙は大金に変わる。最近では、街の人々は効き目の怪しい薬にたんまりと金を出すのだ。

がっしりしたあごを持つ片目の狩人ニコが、別のシャグヤクの蹄の跡を見つけた。彼女は背後にいるエドーを手招きしてニヤリと笑った。クジラの骨の弓を携えた街の金持ちエドーの、歯をむいた笑顔と残忍な眼光に、このチームの最年少であるリズベルはゾッとした。

前方の森の空き地で、八本牙のシャグヤクがまた一頭、大好物の草を食んでいた。三人の狩人は枯れ葉一枚鳴らすことなく、ゆっくり静かに近づいていく。

事前の練習通りの息の合った動きで、三人はそれぞれの弓を構え、慎重に狙いを定めた。柔らかなマルダーベリーとスカリーグラスを食べるシャグヤクの頭は地面近くの低い位置にあり、そのため首の付け根の筋肉のコブが見えない。そのコブを刺し貫けば、狩人が牙を切断する間もコブが血をシャグヤクの体内に巡らせ続ける。牙を採る時点でシャグヤクを生かしておくことが、牙の効能を増すために非常に重要なのだ、とエドーは言っていた。

シャグヤクが頭を上げるのを待ち続ける彼女の首筋を汗のしずくが流れ落ちた。そして獣の頭が跳ね上がった瞬間、背の低いスカリーグラスが生えた空き地はあり得ないほどの早さで茂りだし、足首までの高さしかなかった草はあっという間に人の背丈を超えるほどに伸びた。その茎は真っすぐ太陽目がけて伸び、ずらりと並んだつややかな花々が一斉に開いた。満開のスカリーグラスの壁は、シャグヤクの姿を完全に覆い隠した。

エドーが弓を取り落とした。ニコの無事な方の目は飛び出さんまでに見開かれていた。リズベルの矢は不規則に空を切った。リズベルはその場で凍りつき、背後の木に背中を預け、恐れおののいた。

「この森は呪われてるって言ったでしょ」リズベルはささやいた。「今すぐここを出よう」

「魔法なんて何だってのさ」ニコが言った。「こんなの問題ない」

彼女は矢を矢筒に収めると、長く凶悪な形をしたダガーをベルトから抜いた。

エドーも同じくダガーを構えた。二人はリズベルに牙を放さずそこで待てと合図すると、草の壁の中にスッと姿を消した。彼女は息を潜めて待ったが、二人の足音すら聞こえない。かつては、彼らのように音も立てず獲物に忍び寄れるようになりたいと望んだものだった。それでも、この植物の壁は重く受け止めるべき警告ではないか、という不安感を拭い去ることはできなかった。かつて祖母が話してくれた、この世界をさすらう奇妙な魔法の生き物の物語の記憶が蘇った。ただのおとぎ話よ、彼女はそう自分に言い聞かせた。

不気味な得体のしれない音が空き地に響き渡った。それはシャグヤクの断末魔ではなく、騒々しく裂けるような衝突音を伴って岩が大地を打つ重い音だった。その音の源が何であれ、青ざめて目を見開いたエドーとニコが茂みから飛び出し、全速力で逃げていくには十分なものだった。そして、仲間が何から逃げていったのか、その相手を彼女は見た。

花が、象牙のようにつややかなキクが、ただ一輪、草の上で踊っていた。それは、不思議と好奇心をそそる光景だった。

それからリズベルは、「それ」が近づいてくることに気づいた。草が割れ、石と苔の巨体が姿を現した。生ける花崗岩の化身が、大きく力強く、そしてリズミカルに動いていた。何が起こっているかをリズベルがようやく理解した瞬間、石の巨人に呼びかける穏やかな声が聞こえた。

「デイジー!気を付けて。それと……優しくするんだよ!」

リズベルは牙の包みをひっつかみ、キャンプへ戻る道順を思い出そうとしながら、ニコとエドーの後を追って走った。木の一本一本に、新しい草の壁がそびえている。何かが草の中で葉を鳴らして忍び歩き、逃げ道を探してぐるぐると回るリズベルのことをくすくす笑っていた。彼女は奇妙な森の中に独りぼっちで、恐るべき木々の陰にはさらなる草が、瞬く間にそびえ立って蠢いていた。

リズベルは、祖母が羊の世話をするのと同じ要領で自分が追い込まれていることを理解した。罠に向かって進んでいることを思い知ったリズベルは、肩を強張らせながら草の道を追った。

アイバーンは若い狩人が草の迷宮から飛び出し、シャグヤクの死体に近付くのを見ていた。哀れな狩人はすっかり怯えているようだ。彼女がこれまで彼のような存在を見たことがないことは明らかだった。彼は優しく振る舞おうとしたが、人間の反応は一人ひとり独特なものだ。そう、例えば気取ったミューラークのやかましい鳴き声とは違って。

「どうか怯えないで。でも、それがキミにとって自然な状態なんだったら、それで構わないよ。ボクは待つのはイヤじゃないから」

アイバーンは誰を怯えさせるつもりもなかった。だが、自分以外の存在がどんな反応をしたとしても、相手にはその権利がある。

「やればいいでしょう」リズベルは言った。その声はこわばり、その目はたじろいでいた。「侵入したのは私。どうにでもすればいいわ。早く済ませて」

「早く済ませる?」アイバーンは肩をすくめた。「確かに。キミにもっと相応しい場所があるかもしれないって思いつかなかった。よくわかったよ」

彼女は目を閉じてあごを上げ、喉笛を露にした。そして手を密かにベルトの鞘に延ばし、ダガーを握りしめた。近づいて来い、目にもの見せてやるわ。

「ただ、ボクは知りたいんだ」アイバーンは陽気な声で言うと、枝のような指でシャグヤクの死体を指した。その腕は思いのほか伸び、死んだ獣の背中、血に汚れたその毛皮を愛おしそうに撫でた。

リズベルはダガーを抜いたが、直後、足首に鋭い痛みを感じた。冷たい悪寒が脚をよじ登ってくる。見下ろすと、そこに犯人がいた。イシウロコクサリヘビ、オールダーウッド全域で最も猛毒のヘビだった。

怒りと本能に突き動かされ、彼女はヘビに飛び掛かった。

「いけない!」アイバーンが叫ぶ。

ツタのような根が土から伸びて彼女の腕を捕らえ、攻撃を阻止した。さらに彼女の手首、足首、膝に巻き付く。逃れようともがいたリズベルはダガーを取り落とした。

「私、死んじゃうわ!」リズベルは泣き叫んだ。冷たい毒が、膝を越えてさらによじ登ってくる。

ヘビはアイバーンの足元へ這いずり、脚の外側から胴体へとよじ登っていき、やがて脇の下に姿を消した。そして頭の後ろから現れると、枝の一本に巻き付き、アイバーンの耳元で割れた舌をのぞかせた。

「スススススススみません」ヘビはアイバーンにささやいた。「シシシシシシショックだったから」

「お願い、助けて」リズベルは言った。

アイバーンは少しだけ考え込んだ。

「ああ、もちろん!」彼の蜂蜜色の目にはアイデアが輝いていた。「シャグヤクのことを好きなものがあるんだ。特に死んだシャグヤクを」

「それと、シュルスを許してあげてくれるかい?彼は最近孵化したばかりで、毒の扱いに慣れていないんだ。キミにありったけ注入してしまったみたいだね。彼は本当に申し訳ないと謝っているよ。キミに驚かされて、純粋な本能のままに行動してしまったと」アイバーンは言った。「さあ、見ておくれ」

樹木人はシャグヤクの死体の前に膝をつくと、目を閉じて、深くて土のような調べを口ずさんだ。その両手は土に埋まり、指は拡がっていた。ルーンが刻まれた彼の頭からきらめく緑の火花が両腕を伝い、土の中に潜っていった。やがて、奇妙な紫色のキノコがシャグヤグの体から生えてきた。最初は小さかったそのキノコは、シャグヤク体が腐るにつれてその茎を高くもたげていく。やがてシャグヤグのいた場所には、毛皮と骨、そして一群の紫キノコだけが残された。

「ああ、チクリナンコウタケだ」アイバーンはため息をついた。キノコを一つ、優しく摘み取る。「いつも時間に正確なんだ」

ツタがリズベルの体を放すと、彼女はその場に崩れ落ちた。弾かれたように、その両手が心臓を押さえる。イシウロコクサリヘビの毒の冷たい激痛が、ついに胸に達したのだ。

「これを食べてね」アイバーンは死にかけの娘に紫のキノコを差し出した。「ヒトカゲツユやヒノヒカリタケみたいにおいしくないけど、クチビルダニリンゴほどはまずくないよ」

リズベルはその奇妙な樹木人の意図は理解できなかったが、選択の余地はなかった。昔聞いた言葉が記憶に蘇る。そう、おばあちゃんは言っていた。自然を信じなさい。豊緑の神秘は決してあんたを迷わせないからね。

リズベルはアイバーンの手からキノコをひったくった。苦いお茶と敷き藁のような味。最後の食事としてはあまりに残念だ。だがそう思ったのもつかの間、胸を締め付けていた冷たい激痛はすっと解け、消えていった。ほんの数分で彼女は再び立ち上がれるようになった。

彼女が回復する間に、アイバーンは奇妙な葉っぱに樹液、そして爪先を使って探し出した湧水を使ってチンキを作った。それをハヤブサが運んできた鳥の巣のカップに入れて、リズベルに差し出す。

「あなたがあの、豊緑の神秘なのね?」

アイバーンは、何を言っているのかわからないという風に肩をすくめた。「ここで何ができると思う?」そう言って、シャグヤクの骨に注意を向けた。「苔はいつもきれいに掃除してくれるんだ」

彼がそう言うなり、分厚い苔のカーペットが骨を覆い尽くした。キノコと合わせて、陰惨な死の光景は美しいものへと変わっていた。

「シェルドンも、自分の骨がこんなにきれいになったことを喜ぶだろう。きっとアナグマが、秋の嵐をやり過ごすための避難場所に彼の肋骨を使うはず。無駄になるものなどないんだよ」アイバーンはそう言って、リズベルに注意を向けた。「意味を成さないように見えても、完璧に意味を成してるんだ。彼を殺さなければ、キミは生きられなかった」

「私たちは牙が目当てだったの」リズベルは言った。恥の意識で、自分のブーツを見つめることしかできない。「金持ち連中が欲しがってて。大金を出して買ってくれるから」

「金か、覚えているよ。よい動機になることは少ないもんだね」

「殺すべきじゃないってことはわかってた。おばあちゃんは言ってたわ、もし殺さなきゃならないのなら、骨一本無駄にはしないのが獣への礼儀よ、って」

「キミのおばあさんに会ってみたいなぁ」アイバーンは言った。

「もう土の中よ」

「土に与えられたものを土に返す、実に立派だ」

長い沈黙の後、リズベルは言った。「ごめんなさい」

「全ての生命が貴重な存在なんだ」アイバーンの声に優しさと温かさ、そして赦しを感じてリズベルは涙を流した。アイバーンは彼女の頭を撫でた。「たぶんボク自身、これよりうまくことを収めることはできなかっただろう。人間について思い出すべきことは山ほどある、そして学ぶことを忘れていたことも」

アイバーンは立ち上がるリズベルを支えた。

「そろそろ行かないと。南の池のオタマジャクシたちに、蓮の王の選挙を見張っておくと約束したんだ。訴訟に発展しかねない案件でね」

それからしばらくして、リズベルは木々の切れ目から川辺へと出ることができた。たっぷりと水を飲んだ後、彼女は川辺に穴を掘り、そこにシャグヤクの牙を恭しく収めた。一握りの土をすくい上げ、祖母に教わった敬意の祈りを唱える。その儀式を、牙が完全に埋まるまで繰り返した。それから頭を下げて崇敬を表し、彼女が墓として祀ったその場所を後にした。

オールダーウッドの奥深くで、アイバーンは彼女の行いに微笑んだ。きっとシャグヤクたちも誇りに思うことだろう。

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