シヴィア戦場の女王

「誰の金でも気にしないわ、きちんと払ってくれさえすればね」

シヴィアは、金のためならどのような仕事でも引き受ける。傭兵の一団を率いる彼女は血も涙もない名将としてその名をあまねく轟かせ、砂漠では彼女に仕事を依頼する者たちが後を絶たない。シヴィアは宝石を鏤めたクロスブレードを自在に操り、金に糸目をつけない雇い主たちのために無数の戦いを制してきた。何事をも恐れぬ覚悟と底無しの野望を抱き、シヴィアはたとえ如何なる危険が待ち受けていようとも、砂に埋もれたシュリーマの墓から揚々と財宝を掘り起こす。そこには莫大な見返りが眠っているのだ。しかしシュリーマの骨の髄を揺るがす太古の力を持ち得たシヴィアは、相反する二つの運命の狭間で苦悶する。

砂漠で送る人生が如何に過酷であるか――シヴィアが身をもって思い知らされたのは、まだ幼い頃だった。シュリーマを震え上がらせる匪賊、クタオン族に家族全員を殺害されたのだ。独りぼっちになってから数か月の間、シヴィアは地元の市場から食べ物を盗み、砂漠にある遺跡でちっぽけな装身具を漁っては売り、どうにか生き延びた。

多くの遺跡は既に盗賊に荒らされ、目ぼしい財宝は持ち去られていたが、シヴィアには誰も発見できなかったお宝を発掘する才があった。彼女は目利きの鋭さと強い意思で、隠された通路を次々と見つけ出す。シヴィアは古代の謎を解いて隠されたカタコンベを発見し、仕掛けられた危険な罠を回避して進むことができたのだ。

ひとりでは潜入できそうもない墓を見つけると、他の子供たちを説得して墓暴きを手伝わせることもあった。ひもじさに痩せ衰えた浮浪児たちは、縄を体に何重にも巻き付け、蝋燭を手にすると、遺跡の地下にある狭苦しい穴を下っていき、売れるものを探し回った。

ある日、シヴィアは仲間の子供たちと共に、危険を冒して底知れぬ深さの穴に入った。ここには必ず、見たこともないような財宝が眠っている――そんな確信があった。何時間も探し続けた末に、彼らはついに隠された扉を見つけた。しかしそれは既に打ち破られ、先には空っぽの部屋があるのみだった。無駄足を踏まされたことに腹を立て、シヴィアの最も古くからの仲間であるマイラは、シヴィアにリーダーを降りるよう迫った。シヴィアはこれを拒み、二人は激しい喧嘩を始めた。シヴィアより体が大きく、力も強いマイラはすぐにシヴィアを圧倒し、彼女を岩棚から突き落とした。数時間が過ぎて、シヴィアは暗闇の中で独り目を覚ました。パニックに襲われそうになりながらも、彼女は元来た道へと自分の足跡を辿った。何も見えなかったが、ゆっくりと、感覚を研ぎ澄まして陽光を求めて進み、どうにか抜け出すことができた。ねぐらに戻ると、シヴィアは自分を置き去りにした裏切り者を見つけ、これまで共同で所有していたものを全て奪い取った。

もう二度と裏切られたりはしない――シヴィアはそう誓った。己の身を守る術を学ぼうと、シヴィアは伝説の女戦士、イハ・ジハロ率いる傭兵の一団に入った。彼女はそこで武器を運び、血気盛んな傭兵たちのために雑用をこなした。

長年、シヴィアは毛布の下にダガーを隠し持って眠りについた。ジハロの戦士たちに心を許すことなど決してなかった。傭兵が忠誠を誓うのは金だけだ。しかし、ここで習得できることは全て身に付けなければ――シヴィアは戦いの手解きを受けると、志固く鍛錬を重ね、連日、若い傭兵を相手に武闘訓練に励んだ。

シヴィアの献身的な働きぶりと、目覚ましい向上を見せる戦闘能力はイハ・ジハロの目に留まり、彼女はシヴィアに極めて稀な待遇を施した――自分の直属に置いたのだ。いつしか、シヴィアは強靭な戦士へと成長を遂げた。ジハロの従士として、彼女は幾多の部隊や盗賊、対立する部族と戦った。戦いが終わり、金になる仕事が乏しくなると、シヴィアは傭兵たちを率いて遺跡に入り、シュリーマの財宝を探した。

やがて、シヴィアはイハ・ジハロの庇護の下で生きるのに飽きた。傲慢なリーダーは黄金をほぼ独り占めし、手柄を全て自分のものにした――傭兵たちが墓から手に入れた財宝は、シヴィアの指南なしには見つけることすらできなかったにも拘わらず。更にジハロは、残虐行為を厭わない将軍からの仕事は引き受けようとしなかった。ジハロにはジハロなりの行動規範があったのだ。しかしシヴィアにとっては、金が手に入るならば、どのように血生臭い任務であっても問題ではなかった。取引にモラルなど無用だ。

傭兵の多くはシヴィアに賛同し、ジハロをリーダーから引きずり降ろそうと企てた。クーデターの前夜、ジハロは陰謀を知った。激高した彼女は先手攻撃を仕掛ける――愛弟子が眠っている間に、刃を向けたのだ。シヴィアはそれを見抜いていた。激しい応酬の末、シヴィアはジハロを打ち破る。しかし、シヴィアはジハロの息の根を止めることができなかった。その感情には彼女自身驚きを隠せなかったが、名前の他に何も持たず、困窮の底にあった自分を、ジハロが如何に受け入れてくれたか――感謝の念は今も消えていなかった。シヴィアは、ジハロを砂漠に独り置き去りにした。革袋に半分の水と、金貨一枚だけを残し、虚ろな面持ちで幸運を祈って……

シヴィアの部隊は、名うての戦士が揃い、もはや伝説と化していた遺跡を発見できる最強の傭兵集団としてたちまち評判を上げた。砂漠の豪商や裕福な商人、神秘的な品を求める蒐集家はこぞってシヴィアを雇い、戦いに向かわせるか、あるいは貴重な秘宝を探させた。探検家は、どんなに危険な地域でも分け入っていけるシヴィアの技能に高い金を惜しみなく払い、シュリーマの遺跡を案内させた。族長は襲い来るノクサス軍から領土を守るために、将軍は出征の早期勝利を睨み、戦いの初期段階でシヴィアの部隊を雇った。

“千の嵐”の年、シヴィアは古代シュリーマの街ナシュラメイの君主から、家宝として伝わる十字型のブレードを探すよう依頼を受けた。君主は目付役として自身の衛兵部隊をシヴィアと共に送り出した。数か月に及ぶ捜索の末、シヴィアはようやくその武器を発見する。山のような瓦礫の下に、今はもう忘れ去られた英雄が眠る石棺が埋もれていた。ブレードはその中に収められていたのだ。石棺の中からブレードを引き出したシヴィアは、不思議な感覚に捉われた。これまでの人生は全て、この瞬間に導かれていたのか……その武器は黄金とエメラルドに輝き、古代に創られたにも拘わらず、その刃は打たれたばかりであるかのように研ぎ澄まされていた。

シヴィアはクロスブレードを前に立ち竦んだ――この武器は、ずっと自分を待っていたに違いない。ナシュラメイの衛兵隊長は、ブレードを君主に届けるよう命じた。しかし、シヴィアには分かっていた――自分には、これを手放すことなど到底できない。シヴィアはブレードを宙に投げた。ブレードは弧を描いて、護衛隊長はおろか、背後にいた三人の護衛の首もろとも刎ね落とし、唖然とするシヴィアの手元に戻ってきた。ブレードはシヴィアの手にしっくりと馴染み、投げれば凄まじい威力を発揮する。シヴィアはブレードを手に、戦いながら来た道を戻って行った――ナシュラメイの衛兵たちを仕留めた高揚感に包まれて。

シヴィアの功績と果敢な戦いぶりは既にシュリーマ全土の知るところであったが、その評判は砂漠を遥か越えて広がっていった。ノクサスにいるカシオペアにも、シヴィアの名は伝わっていた。カシオペアは名家に生まれた野心的な女で、砂漠の真っ只中にある隠された遺跡を欲していた。金に何不自由のないカシオペアは、失われたシュリーマの都に潜入するべく、案内人になるようシヴィアに持ち掛けた。

シヴィアの中で何かが囁く――この女はどこか訝しい。しかし、儲け話を断る理由にはならなかった。埋もれた都市の曲がりくねったカタコンベを奥深くまで進む途中で、傭兵たちは無数に仕掛けられた罠にかかり、次々と命を落としていった。しかしカシオペアは撤退を許さない。どこまでも続く闇の中を何日もかけて下った末に、シヴィアとカシオペアはついに、目を見張るような浮き彫りが施された壁画を発見した。そこには古代の歴代皇帝と、野獣の頭を備えた超越者の戦士たちが描かれている。これまで目にしてきた古代の建築物は、何千年も砂に埋もれてほとんどが荒廃していたが、この壁には不思議なほどに損傷がなかった。シヴィアは浮き彫りを見つめるうちに、血が掻き立てられるのを感じた。じわじわと既視感が湧き起こり、恍惚感に捉われていく――隙を見せたこの一瞬に、シヴィアの運命は封印された。

シヴィアの隙をついて、カシオペアはシヴィアに忍び寄ると、背中に刃を突き立てた。シヴィアは苦悶のうちに崩れ落ちた。砂に血が浸みていく。カシオペアはシヴィアの手をこじ開け、クロスブレードを奪い取った。意識が零れ落ちるように遠のいていく――蝋燭の蝋が垂れ落ちるように。体温が奪われ、シヴィアに死が迫り来る。

しかし、シヴィアの運命は尽きていなかった。流れゆくシヴィアの血は、彼女の祖先であり、遥か昔に没した皇帝、アジールを蘇らせた。彼女の血が宿す王族のこだまが、彼の魂を引き寄せたのだ。アジールはシヴィアの体を抱え上げ、かつて癒しの水を並々と湛えていた聖なる泉、“暁のオアシス”へと運んだ。数千年が経ち、とうに干からびたその泉には、今や清らかな水が溢れんばかりに湧き出ていた。癒しの水がシヴィアの体を包み、カシオペアから受けた致命的な傷がゆっくりと治癒されていく。

苦しげに喘ぎ、シヴィアは目を開けた――呆然と、何が起こったのかも分からず、夢から引きずり出されたかのように。どこか懐かし気な顔がぼんやりと視界に入った。その人物は優しく彼女を見下ろしている。シヴィアは瞬きをした。私は生きているのか、それともここは死の世界なのか……周囲では砂埃が空高くまで巻き上がり、そびえ立つ宮殿や壮麗な寺院、広大な広場が形作られていく……砂にまみれた墓から、古代都市帝国シュリーマが浮かび上がった。栄光に輝く絢爛な都。上空には真昼の太陽より遥かにまぶしい、巨大な黄金の円盤が輝いている。アジールの復活とともに、古代都市にはその栄華が蘇った。

シヴィアは幼い頃、超越者の伝説を聞かされてはいたが、そんなものは子供か愚か者しか信じない作り話だと思っていた。完璧な無の状態から石のひとつ一つまでが完璧に蘇った古代都市に佇み、遥か昔に死んだ皇帝と向き合って、その不朽の血統と帝国復興の悲願を聞かされるうち、シヴィアは体が芯から震えるのを感じた。これまで彼女が信じてきたものが、全て崩れ去る。

アジールの言葉は、いつまでもシヴィアの耳の奥で鳴り響いていた。シヴィアは人生の全てを傭兵として生きてきた。毎日金のために戦うことこそが、彼女の拠り所だった。よもや、自分が失われた帝国の後継者であるかもしれないとは――そんな現実は到底受け入れられない。シヴィアはアジールの話を頭から振り払おうとした。アジールの語ることが全て真実だとしても、あまりにも異なるシュリーマの各部族を統一することなど、誰にもできはしない。ひょっとすると、十分な金と戦士を備えた屈強の将軍であれば、限られた領域をある程度の期間治めることくらいはできるかもしれない。とはいえ、この土地を全てひとつの旗のもとに統一するなど、決して叶わないであろう。ましてや唯一無二の統治者に頭を垂れるなど――もしも、それが真に古代の皇帝であったとしても。

かつて治めていた最強の帝国をアジールが再興しようとするにつれ、シヴィアは膨れ上がる疑念に苛まれる。自分はかつての人生に戻るべきではないのか。不気味な力がシヴィアの世界にじわじわと広がってゆく。幸か不幸か、運命は彼女にふたつ目の人生を与えた。

シヴィアは己の進む道を選び、新たな遺産を築き上げなければならない。

喉はガラスの破片に覆われているかのようで、ひび割れた唇は焼けるように痛かった。眼球はもはや彼女に従わず、焦点を合わせることすら叶わない。奴らには先に進むだけの時間を十分に与えたはずよ。

シヴィアは大きな岩の影から顔を覗かせた。隊商は未だ泉に留まっており、先へ急ぐそぶりも見せない。

なんでよりにもよって、クタオン族なのよ。シヴィアの命を狙う部族は数え切れないほどあったが、その中でも特にしつこいのがこのクタオン族であった。

今すぐにでも古い川床から上がり、旅を再開してくれないものかと祈りながら、シヴィアは隊商の面々を観察した。五、六人の男を相手にできるだけの力が自分に残っているかどうか、肩を回し見極める。やれるとしたら、奇襲する他にない。

あの忌々しいノクサスの犬め、この私をはめるなんて…

シヴィアは頭を振った。今はそんなことを考えている場合ではない。平静を取り戻さなければ。脱水症状で思考力が落ちているんだわ。ああ、どうしてもっと水を用意してこなかったのかしら?

街には水が溢れかえっていた。いにしえの者が命令すれば、彫像からは滝のように水が流れ出た。あいつが私の傷を癒してくれなければ、私は死んでいた。それからシヴィアには理解することのできない古い言葉を発しながら、周囲の寺院の再建を再開した。砂に覆われた滅んだ街で、ずっとブツブツ独り言。あの魔法使いがすべてを砂の下に元通り沈めてしまうか、あいつに借りがあると思われる前にさっさと消えなきゃ。

唾液を飲みこむことすらシヴィアの喉を激しく痛めつけた。シヴィアは再び泉を見やったが、その茶色く濁った水たまりの周りには未だ隊商がたむろしていた。

一日くれてやったのよ。シヴィアは自分に言い聞かせた。私か、奴らか、どちらかが死ぬ。数滴の水か、数枚の金貨を賭けて。それが砂漠での生き方。

一人目の衛兵めがけて飛び出しながら、シヴィアはクロスブレードを構えた。果たして奴が振り返る前に、間に合うだろうか?シヴィアは距離を目算した。十四歩……十二歩……十歩……男に決して音を立てさせてはならない……二歩。シヴィアは衛兵に襲いかかった。彼女の刃は男の喉元に完全に沈み込み、そのまま肩へと振り下ろされた。

シヴィアが男を地面に叩きつけると同時に血が噴き出した。跳びかかった勢いのまま、彼女は衛兵を後ろの岩陰に引き込む。男の腕を抑え込むと、その死んだも同然の男は、その事実を拒むように足掻いていた。男は最後の一息とともに大量の血を吐き、シヴィアを真っ赤に染めた。この男が死ぬ必要なんてなかったのに。

シヴィアはまた、カシオペアの刃を思い出していた。あのノクサスの蛇女は、私の背中に刃を突き立てた……そうして私は一度死んだ。それには何か、意味があるはずよ。

遠くで地響きがした――馬?それとも砂壁が崩れ落ちる音?それが何であるか考える時間など今はない。シヴィアは硬い石が転がる地面を、這うように移動した。衛兵が姿を消したことに隊商が気づくまでそう時間はないわ。次の標的は尾根に沿って歩いていた。男が岩棚の端から離れる前に、息の根を止める必要があった。完璧な一撃が必要よ、シヴィア。彼女はクロスブレードを放った。

放たれた刃は二人目の衛兵に命中し、男を真っ二つに引き裂いた。空を斬る刃はさらに上昇し、頂点に達してスピードを落とすと折り返した。シヴィアへと戻る途中、クロスブレードは三人目の男の首を切り落とした。もう一度投げる時間はない。刃はその弧を描ききると、泉の中心に向かって落ち始めた。落ちきる前に、うまくキャッチしなくてはならない。立ち回りはいつも通り。武器をその手に取り戻し、前転しながら残り三人を一振りで仕留める。

だが走る途中、シヴィアの足は急に重くなった。痛む肺は、十分な空気を取り込むことができていない。三十歩。二人目の死体が岩場に打ち付けられる前に、彼女は距離を詰める必要があった。二十歩。足がつり、言うことを聞いてくれない。十五歩――足がもつれ、シヴィアは崩れ落ちそうになった。まだ、まだよ――。

すると、シヴィアの計算よりも速く、二人目の男の死体が落下して岩を叩いた。その音を聞き逃すクタオン兵ではない。

たった一度の過ちで十分だった。クタオン族は砂漠の民である。シヴィアが次の一歩を踏み出すよりも先に、生き残りの衛兵たちは武器を抜いていた。

シヴィアのクロスブレードは、クタオン兵らとシヴィアの間の水溜まりに落ちた。相手から五歩、シヴィアから十歩の距離だった。

いける――シヴィアの体に叩き込まれた動きは、彼女を前へと押し出そうとした。だがシヴィアは倒れそうになりながら移動し、滑りながら急停止した。

十分な水の貯えがなかった。攻撃を仕掛けるまで待ち過ぎた。距離を見誤った。こんなつまらないミスはしないはずよ。なのになぜ?シヴィアは心の一部では答えが分かっていた。カシオペアのダガーが、シヴィアの背中に突き立てられた次の瞬間を思い出す。シヴィアは、ダガーの刃そのものを感じることはなかったが、突然予期していなかった重みを感じ、呼吸が奪われ、肺を押しつぶされるような感覚を味わった。

「あんたらが私に気づく前に、お仲間三人の命を頂戴したわよ」シヴィアは咳き込みながら言った。

「武器がないようだな」もっとも体格の良いクタオン兵が言った。

「あんたの血が、水に入っちゃ困るからね」シヴィアは強がった。

残った三人の男たちは互いに視線を交わした。私が誰だか気付いたようね。

「一年前、たった金貨ひと袋のために、私はあんたらの族長と精鋭を二十人ばかり殺した。それだけの命にしてはずいぶん安い仕事だった」シヴィアは男たちの目を見て言った。クタオン兵たちは水場から離れ、シヴィアを取り囲もうとしていた。

「あんたらの族長と手下たちを殺して得た金、どうしたと思う?」シヴィアは言った。「賭博で一晩にしてなくなっちゃったわ」

「仲間の命、そして貴様の侮辱。報いを受けてもらうぞ」もっとも体格の良いクタオン兵は言った。

「あんなはした金のために殺すべきじゃなかった――」シヴィアは言った。「お水二、三杯のために、あんたたちを私に殺させないで」

クタオン兵のリーダーは張りつめた様子で武器を持ち直した。

「いい?あんたがピクリとでも動く前に、私はその刃を取り戻すことができるの」シヴィアは言った。「私があの武器を手にすれば、あんたらは死ぬ」シヴィアは、目の前の茶色く濁った水に一瞬視線を投げて言った。「あんたらの命は、そんな泥水よりは価値があるはずよ」

「では我らは誇りをもって死のう」もっとも体格の良い男はそう言い切ったが、他の二人には迷いがあるようだった。

「あんたが仇を討ちたいっていう二十人の男たちを殺すのに、私、あの武器が必要だったかしら?」シヴィアは警告する。「ましてやたった三人くらい……頭数が足りてないよ」

三人の男は躊躇っていた。シヴィアの評判を彼らはよく知っていた。他の二人がもっとも体格の良い男に下がるよう促し、三人は馬の傍らへと戻った。

シヴィアはじりじりと水の方へと近づいた。

「クタオンの民を引き連れ、必ずや復讐してやる」

「これまでにも大勢がそうしようとしたわ」シヴィアは言った。「今のところ、うまくいった試しはないみたいだけど」

シヴィアは口の内側で腫れた舌を丸めた。早く喉を潤したかった。体の全ての細胞が、今すぐ水面に跪き水を口にしろと命じていた。でも、クタオン兵たちが向こうの砂丘を超えるまで待たないと。

男たちは鞍に跨り馬を走らせた。すると、再びあの妙な地響きが聞こえてきた。音は大きく、そしてさらに大きくなっていった。馬の音でも砂が崩れる音でもないわ。シヴィアは音が聞こえてくる方を見やった。古代の川床を、青い水の壁がものすごい勢いで迫ってくる。あれは、街から溢れた水だわ。

水流がシヴィアにぶつかる直前、彼女は冷たく湿った空気が駆け抜けるのを感じた。それはまるで、突然の口づけのように彼女を動揺させた。

最初の波で、シヴィアはあと少しで足元をすくわれるところだった。衝撃は痛いほどの冷たさを伴ったが、彼女の脚を、腰を、水が包むにつれ、それはひんやりとした心地よさに変わった。シヴィアは水の流れに身を任せ、体の汚れを落とした。水に自由に漂わせた髪から、砂漠の砂粒が洗い落とされていく。

私は一度死んだ。そこには何か意味を持たせなくちゃいけない――。