/dev: 龍の魔女のサウンドデザイン

Vonderhamzによる

皆さん、こんにちは!パーソナライゼーション(スキン)チームでサウンドデザインを担当しているAustin “Vonderhamz” DeVriesです。私の仕事は効果音やチャンピオンの音声を作ってゲーム内に実装し、キャラクターにルーンテラにおける存在感を与えること、そして音によるゲームプレイ上の明確なフィードバックによって、プレイヤーが自身のポテンシャルを最高レベルで発揮しプレイできるようにすることです。多くの人は視覚情報を頼りにしているため、サウンドデザインという仕事なんて聞いたことがない人もいれば(ため息)、もしかすると黒魔術か何かだと考えている人もいるかもしれません。

サウンドデザインのコンセプト段階から完成に至るまでの過程を知ってもらうために、LoLの中でもなかなかに獰猛な新スキン――龍の魔女ザイラにおけるサウンド作りがどのようなものだったかについて詳しくお話しします。


ゼロからの始まり

スキンを開発する時は常にコンセプトから始まります。この段階では、複数の開発者からなるチームが、チャンピオンの核となるテーマを捉え、その要素の一部を120%まで高めるような新たなフィーリングを作り上げようと試みます。チームとして、私たちは「自分がこのチャンピオンを使用するとしたら、どうすればもっとカッコいいと感じるだろう?」と考えます。その後、コンセプトアーティストがこのアイデアを映像に変換し、モデリング、テクスチャ、アニメーション、VFXを担当するアーティストたちに、さらなる方向性を提示します。そしてこのアーティストたち全員が、2Dのコンセプトを忠実に3D空間に再現します。

ちなみに、これらの作業はすべてビジュアルが中心です。

あらゆるスキンはコンセプトから始まります。

この段階におけるサウンドデザイナーの仕事は、他のチームや個々のアーティストの手による作品を向上させるために、コンセプトアートを音に変換することです。これは簡単な仕事ではなく、そこには強い信頼関係が必要になります。正しい判断を行えば、アニメーターやVFXアーティストの作品はより明瞭で迫力のあるものとなりますが、判断を間違えれば、迫力に欠けた安っぽいものに感じさせてしまいます。

ライアットのオーディオチームでは、ライブラリーの音を直接使用することは決してありません。個々のチャンピオンには、その個性を引き立たせてゲームプレイの魅力を強化する独特な音の特徴が必要です。その特別なサウンドを作り上げるために、私たちは「ビルディングブロック(構成単位)」と呼ばれる手法を使います。ビルディングブロックを作るために、ソースとなる素材を収録し(これは文字どおり何だって構いませんが、通常はチャンピオンの性格やテーマにふさわしい何かです)、その後、様々なサウンド加工プラグインを利用してソースの音に処理を行います。こうして、スキルの効果音をデザインする際にレイヤーとして使用する、複数の短いサウンドクリップが出来上がります。

チャンピオンの特徴ある音を生み出すには、オリジナルに作成した音源が一番効果的です。タム・ケンチの「味見」は、濡れた羊のなめし革をバスタブに打ちつけたり、様々な風船をシンクに沈めたりして作られました。荒野のジンでは大量のベーコンの油が弾ける音がオートアタックに使われていて、アルティメットスキルには反響室で録音した口笛の音が使われています。エコーのサウンドキットの大半は、異なるサイズのガラスのかけらを様々な種類の床の上に滑らせて作りました。そしてなんとザックの音は“個包装されたあのゴム”いっぱいに詰め込んだドッグフードを壁に叩きつけたものなのです。おわかりになりましたか?

特に決められたルールはないのです。一番の狙いは特徴のあるサウンドを手に入れることです。


コンセプトに命を与える

ザイラのドラゴンのコンセプトを見た時、三つの主要な目標がすぐに思い浮かびました――二種類の「プラント」の違いを明確にすることでゲームプレイを整理すること、明瞭で短いサウンドデザインにしてあまり騒々しくないチャンピオンにすること、そして彼女のドラゴンが実際にサモナーズリフトに存在していると感じられるようにすることです(プレイヤーの目の前にいるだけでなく)。これを実現するために、いくつか音源を収録する必要がありました。

ザイラのドラゴンのサウンドを作るために、一番最初に録音したのがこれです。


これは、私とチームのテクニカルアーティストがマイクの前で舌や喉を鳴らした音を録音したもので、何も加工していません。はい。ゴミみたいな音でお恥ずかしい限りです。でも、大事なのはそこではありません!狙いはコンセプトの特徴を表現する何かを捉えることです。この舌を鳴らす音は、ゲーム内のザイラのプラントの攻撃性を思い出させます。これらの中には非常によくできた音調の要素があり、それを少し強調して叫び声に変化させたいと思いました。喉を鳴らした音はすごく気に入っています――首の長い生き物たちの喉の奥の方で弁が振動しているように聞こえます。ピッチを落とせば、もっと長い首だと感じられるでしょうか?

これらのクリップには、ドラゴンの生体構造が生み出す音がどのようなものであるかを公式化するために私が必要としていた要素が含まれています。この音には特徴があるのです。

その後、オーディオテクニックを駆使して、最終的に出来上がったものがこれです(これ以外にも同じようなビルディングブロックやショートクリップを100回ほど作成しました)。


時々混ざる金属がこすれる音を除けば、この録音の中にあるものは100%人間によって作られたものです。最終的にたくさんの異なるドラゴンの声を作成することになりました――速いもの、遅いもの、音調の豊かなもの、騒々しいもの、カラカラと鳴るもの、叫んでいるようなもの。バリエーションが豊富にあるのはいいことです。それによって彼女のスキルセットのサウンドを作成する際に選択肢が増えます。


ムードを設定

この時点で、チームは不思議に思っているでしょう――私は一日中何をしているのか、なぜ私は爬虫類の写真のタブを15個も開いているのか、なぜ私の声が枯れているのか…そしてその理由はまもなく明らかになるのです。チームと一緒に作業してきた作品をシェアするために、私はオーディオコンセプト「ムードボード」を作成します。これには私が作ったビルディングブロックの中のお気に入りの瞬間が含まれています。オーディオクリップを順番に再生するシンプルなものでも構わないんですが、私は物語を伝えるようなものの方が、より魅力が高まると思っています。

囲まれてしまったシン・ジャオ。マーキュリーブーツを持っていればいいんですが。

私は新しいドラゴンっぽいスプラッシュアートから刺激を受けました。これは邪悪な龍の魔女ザイラを倒すために、英雄シン・ジャオが勇敢にその巣の中に入っていく物語を伝えています。この物語はムードボードにぴったりでしたし、コンセプトアートに描かれていた感情をさらに強化することができていました。


外に降る雨や洞窟内に滴る水などのディテールは、ムードを演出し、ビルディングブロックのサウンドにその根拠となる背景を与えます。オーディオクリップが連続で再生されるムードボードだと、ビジュアル中心のアーティストにとっては理解しにくいでしょうが、物語を作り上げる手法なら、私が作ろうとしているサウンドの持つ感情や特徴を非常に効果的に伝えることができます。これによって、彼らがそこから感じたものを伝えることで、私はチームからフィードバックを得ることができ、自分が作ったサウンドがどれくらい効果的だったかを把握することもできます。その後、必要に応じて調整を行い、さらなるビルディングブロックを作成します。


ドラゴンをデザイン

チームが方向性に合意できたら、私はゲーム内アセットの作成に移行します。ここでの狙いは、特徴を伝える音を作ること、そしてより重要なこととして、ゲームプレイを強調することにより、プレイヤーがいつスキルを使用して、それがいつ命中したのかを明確に理解できるようにすることです。例えば遠隔攻撃ドラゴン植物の攻撃では、三種類の音を作成する必要がありました。一つ目はスキル使用またはドラゴンが攻撃の準備をする音、二つ目はドラゴンが口から飛翔物を吐く音、三つ目はそれが対象に命中した音です。それぞれのサウンドは、ゲームプレイに合ったものでありながらも、攻撃する度に少しだけ違って聞こえるように、微妙に異なるバリエーションが必要です。

ザイラの植物のコンセプトアート

まずはスキルの各パートの長さを調べることから始めました。スキル使用時と発射時は両方とも0.25秒ほどの長さだったので、私が作成した音はどちらもその長さで次に繋がるものでした。攻撃が命中した時の音の長さはそれほど問題にはなりませんでした。なぜなら、アニメーションの視認性やテクスチャの方がゲームプレイにとってはより重要だからです。

そこから、スキルの各パートの長さと一致していて、その特徴を持っているビルディングブロックをインポートしました。飛翔物を吐く遠隔攻撃ドラゴンと、噛みつく近接攻撃ドラゴンに差を付けるために、より音調の豊かな、パタパタした音のビルディングブロックを使用して首の長さ強調しつつ、近接攻撃ドラゴンにはより高い攻撃性が感じられるように、カタカタする唸り声のようなビルディングブロックを使用しました。適切なビルディングブロックをインポートして編集したら、各植物の特徴を補間するその他の要素を追加しました。大きなネコの鳴き声や、クリーチャーの鳴き声の音源として私の個人的なお気に入りである「ラクダ」などです。

編集が終わると、求める部分の音を強調して不要な部分を削除するために、オーディオエフェクトを個別のレイヤーもしくはグループのレイヤーに追加しました。ここでの狙いは、ビルディングブロックの特徴となる部分を強調して、LoLの世界に根付かせることです。オーディオエフェクト、オートメーション、マスタリングなどの一定の作業を終えたら、サウンドを実装してゲーム内でテストする準備が整います!

Pro Toolsによる最終バージョンのザイラのQの植物の効果音


終わりに

ゲームプレイとテーマ性の両方を強調したかっこいいスキンを制作できている理由の一つは、アーティストとサウンドデザイナーの緊密な協力関係にあります。アーティストのビジュアルデザインが私たちの作業の道しるべとなり、私たちが作成するサウンドがスキンのアーティスティックな方向性に刺激を与えます。

ライアットのオーディオチームは、スキンやチャンピオンの持つフィーリングを強めるサウンドを作ろうと常に努力していますが、最優先事項はゲームプレイなので、時にはそれが難しいこともあります。かっこよくてスキンのテーマに合うサウンドがあったとしても、それがLoLにふさわしいものだとは限りません。例えば、私たちがザイラのドラゴンに長くて大きな吠え声を与えたいと思っていたとしても、それが植物魔女に対してプレイヤーが期待するオーディオのリズムに合わないなら、採用することはありません。良いサウンドは感情とゲームプレイが交差するところから生まれます――たとえそのサウンドの源が、マイクの前での数時間にわたる絶叫や舌打ち、そして喉鳴らしだったとしても。


7 months ago