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チャンピオン開発エピソード:アクシャン

悪党の中で輝く英雄

Dev作者RIOT CASHMIIR
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アクシャンはとても複雑な人物です。強大な力を持つ古の武器で戦いに挑む光の番人。どんな犠牲を払ってでも、正しきことをするのが信条である男で、おまけに笑顔が素敵です。

おっと、アクシャンがグラップルガンとステルス、そして蘇生能力を持ったマークスマンだということはもうお伝えしましたっけ?後ほどご説明しますので、ご心配なく。

新しいタイプのアサシン

アクシャンの素敵な目に吸いこまれる前に、彼の原点についてお話しましょう。アクシャンのゲームプレイ開発における目標は、「ラックスをプレイしているヤツをコテンパンにしてやろう」といったプレイスタイルの合う、狡猾でアウトローなアサシンを作り出すことでした。

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アサシンを印象的にしている要素の一つが、相手にやり返す間も与えずに攻撃を仕掛けられるスキルです。LoLではアカリの「黄昏の帳」や、パイクのスタンのようなCC(行動妨害)、タロンのアルティメットのようなインビジブルなど、対象指定不可能力のようなものです。彼らはみな機動力に優れ、神出鬼没に不意打ちを仕掛けるゲリラスタイルの攻撃を得意としています。チームはアウトローなアサシンのスキルキットを制作していましたから、ステルスは当然の選択肢でした。しかし、ステルスはLoLのアサシンにとって新しいコンセプトではないので、次の議題は「どうやってアクシャンに独自性を与えるか」というものでした。

その答えはゲームデザインについて考えるのではなく、プレイヤーのメタを見ることで見つかりました。

「これまでもプロや一般の試合でマークスマンがミッドレーンに赴くのを何度も目にしてきましたが、どのチャンピオンもミッドに属しているとは感じられませんでした」ゲームデザインリードのJeevun“ Jag” Sidhuは振り返ります。「行動妨害や接近能力、瞬間火力など…ミッド向けにデザインされたチャンピオンならば持っているべきものがマークスマンにはないのです。なので独自のアサシンスタイルだけでなく、はっきりとマークスマンを感じられる体験を作り上げたかったのです...そしてこの2つの世界をミッドレーンで組み合わせました」

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位置取りはアサシンとマークスマンのどちらをプレイする上でも非常に重要な要素です。アサシンとしては、耐久力の低いキャリーを奇襲して圧倒したいのであって、空気で膨らませた短剣で筋骨隆々の前衛をつつきたいわけではありません。そしてマークスマンは攻撃の対象にされやすい耐久力の低いキャリーですから、1歩間違えるとあっさりと倒される危険があります。アクシャンはこの両方をあわせ持つため、戦闘での位置取りをよりコントロールできる能力を与えたいと考えました。こうした一連の考えから、空を高く飛び回る、超クールで粋なゲームプレイが導き出されたのです。

「私はアクシャンに南アジア文化の一部を取り入れて表現したいと考えました。私が幼少期に見て育ったものなんです──昔、母はボリウッド映画を山ほど観ていましたから。ボリウッド映画の特徴の1つは、ドラマチックかつ見栄えと楽しさを重視したド派手なアクションスタイルです」Jagは言います。「LoLの特徴的な移動スキルは、試合において一番の見どころになることがよくあります。私は制作するチャンピオンごとにユニークな移動スタイルを作るという、ちょっとしたデザイン目標を掲げています。アクシャンのオリジナル ナラティブライターであるDavid“ Interlocutioner” Slagleとともに、プロセス開始時に長い時間をかけて動力源としてのロープ──罠や仕掛け線などについて話し合いました。どれも上手くいきませんでしたが、グラップルフックは上手くいったんです」

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そしてこうしているうちにも、チームは彼の行動の背景や動機ついても考える必要がありました。アクシャンとはどんな人物で、なぜ敵と真っ向から戦うのにステルスやグラップリングフックを使うのか。そしてどのようにして今に至ったのでしょう?

ルールは破られるためにある

アサシンについて考えるとき、頭に浮かぶチャンピオンは、たくさんのシャドウスレイヤーアサシンや、とてもフレンドリーなサキュバス、悪魔のようなピエロ、そして可愛いお魚さんです。しかし、どれもアクシャンにしっくりくるものはありませんでした。彼はグラップルフックで戦闘に飛び入ります。もっと...かっこいいはず。絶対。

「アクシャンのゲームプレイを実際に具体化し始めたとき、彼がとても魅力的なワルだということが明らかになったんです」ゲームデザイナーのGlenn “Riot Twin Enso” Andersonは言います。「そして、魅力的なワルがすることと言ったら?そう、グラップルフックでガラス窓をぶち抜き、パルクールのように跳び回り、そして悪党の頭を撃ちぬくのです。その性格はアクシャンのゲームプレイスタイルにぴったりでした!しかし、彼はエズリアルのようなうぬぼれ屋ではありません。アクシャンは目立とうとして自分の善行を自慢するようなことはせず、ただ静かに事を済ませます。ウィンクくらいはするでしょうね。」

クラっとくるような魅力の持ち主であるだけでなく、彼はルールに縛られません。彼はあくまでも「組織なんか知らねえ」といった類の人物です。それが崇拝される古の組織、光の番人であったとしてもです。

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「私たちはずっと、アクシャンを光の番人の一員にするつもりでした」シニアコンセプトアーティストのJustin “Riot Earp” Albersは語ります。「ですが光の番人のこととなっても、彼のルールに従わない性格を描くことが重要でした。独自のファッションスタイルと同じように、彼は自分以外の何にも定義さないんです。アクシャンの持つ、強力な古の番人の武器である銃でさえ、自分の好きな戦闘スタイルに合わせて改造しています。他の番人たちに敬われたり、恐れられるかどうかは関係ないのです──アクシャンは、グラップルフックで独自の戦い方をするんです」

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Illustration exploration by Esben Rasmussen

とはいえ、そこまで単純なわけでもなく、その気取った表情の裏には「痛み」が存在しています。苦難の人生、という痛みです。彼が必死で目指してきた自己が崩れかけてしまうほど、あまりに大きなものを失ったのです。

アクシャンはシュリーマの村で浮浪児として育ちました。幼い頃から周囲の不正に対して見て見ぬふりをすることが苦手で、間違った行いだと彼が見なせば、恐ろしい将軍にさえ盾突いたものでした。ところがある日、彼は怒らせてはいけない男を怒らせてしまったのです。

彼は殴られ、息絶えるまで道端に放置され、死の甘き抱擁に屈しさえしました。ですが優しき女性、シャーディアによって救われました。シャーディアは恐るべき力を持った武器を使い、少年を復活させたのです。彼女はやがてアクシャンの師となり、光の番人に加わって信念を活かせるよう彼を鍛え上げます。

そして二人は古の番人の武器を収集するために、ともにシュリーマの各地を旅しました。いずれ訪れるヴィエゴの帰還と、善と悪、光と闇の最後の戦いに対抗するために。なんの変哲もない物語。ですが、シャーディアが殺されたことで、すべてが崩れてしまうのです。アクシャンはかつて彼を救った武器を手に取り、迫り来る破滅を止めるというシャーディアの話をすべて忘れ去りました。彼の望みはただ一つ…復讐です。

「復讐者と英雄のちょうどいいバランスを見定めるのに苦労しました」プリンシパル ナラティブライターのJohn “JohnODyin” O’Bryanは言います。「開発中のある時点でアクシャンの人物像をわずかに調整しましたが、悪の方に大きく傾きすぎてしまって…善良な部分を失ってしまったんです。一時期、アクシャンはプレイヤーが応援したいタイプの人物ではなくなってましたね。最終的には、道徳的にグレーな位置に落ち着いたと思います。強い道徳観と善なる動機を持っていることで、自身が標的とするタイプの人間にはならずにいるのです」

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恨みと正義のバランスを見極めることが、アクシャンの性格を見極めるカギでした。これは彼が一歩間違えてしまえば、とある人物のようになっていたかもしれないことを考えると、特に重要なのです...

二人の男、その差は紙一重

アクシャンとヴィエゴはコインの裏表のような存在です。彼らはどちらも愛する人を失い、その人を取り戻したいという想いに駆られています。彼らを隔てるのは、これまでの人生で行ってきた選択です。

ヴィエゴはわがままな王子で、一人の女性を自分のものとして見ています。一方アクシャンは、正義のために立ち上がったがために、(実際に一度)殺されてしまった浮浪児でした。悲しみと利己心を抑えることを拒んだヴィエゴは、多くの者を殺してしまいました。ですがアクシャンは自身を守る力を持たない人々を守るため、光の番人として訓練を受けました。ヴィエゴは世界の破滅を望む一方、アクシャンは世界を救わなければなりません。

これはこれでいいのですが、LoLはビジュアルノベルではなくMOBAです。ですから、この二人の違いや類似点がいくらあろうと、ゲームの中で描かれていないかぎり重要ではありません。

「アクシャンをミッドレーンのマークスマンとして考えたとき、私は同じチームでプレイするのがどれほど苦痛か考えずにはいられませんでした」Jagは言います。「トップレーンでも同じです!レベル2で対戦相手をキルしてスノーボールし、試合をキャリーして賞賛を一身に受けるか…遅れをとってまったくの役立たずになるかのどちらかです。マークスマンはメイジが持つような行動妨害を持たず、スケーリングにはより時間を要します。基本的に、ソロレーンのマークスマンはチームメイトに最悪なゲーム体験をもたらす可能性があるんです。アクシャンにはそれに当てはまってほしくありませんでした。協力して戦うことは楽しく、見返りがあるものだとプレイヤーに再認識させるようなチャンピオンを作るのが好きなので。アクシャンの人となりとも辻褄が合いますしね」

アクシャンは比類のない接近能力を持っています。これは、チームがまだ提示していない問いに対する答えにもなりました。それは「彼にとって誰が標的なのか?」というものです。

答えは簡単なようにも思えます。アクシャンは悪人や殺し屋、つまり悪党を追ってます。しかし、彼らを追い詰めることへの見返りがなくてはなりません。アクシャンが仲間を気にかけていることを示すような見返りが。では、もしアクシャンが...仲間を生き返らせたらどうでしょうか?

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「アクシャンの能力の大部分は武器と、その武器にアクシャンが加えた改造に由来するものです」Riot Earpは説明します。「彼の持ってる要素を簡素化し、単にガジェット使いとして伝わってしまうことを防ぐためにグラップルフックとブーメランを銃の一部にしましたが、これは同時に彼の武器の重要性を示すことにも一役買っています」

蘇生能力はLoLで適切に実装するのが非常に難しいメカニズムです。チャンピオンが試合を一変させるようなメカニズムを持つためには、キットの他の部分でパワーを削ぐ必要があることを考慮するとなおさらです。行動妨害、機動性、またはその他のツールを持っている場合、他の方法でパワーを削る必要があります。そこで、倒されたチームメイトを復活させるアクシャンのスキルとのトレードオフとして、実際の戦闘力の一部を削ることになりました。

これはゲーム内では、アクシャンのパワーが瞬間火力に限定され、従来マークスマンが持つ「継続的な火力で前衛から倒していく集団戦スタイル」ではないということを意味します。また、多くのアサシンとは異なり、彼はスロウや行動妨害を持っていません。ですが、彼が集団戦にもたらすものは、それらと同じくらい強力です。それに笑顔が魅力的な若者にピンチを救われるのが嫌な人なんて…いないですもんね。

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Akshan’s ally resurrection VFX by senior VFX artist Kelvin “Riot Faybao” Huynh

クアドラキルしたばかりのヴィエゴのような、圧倒的な敵と戦って周りの味方が全滅したときこそ、アクシャンはその力を最大限に発揮します。もう後が無くなったという瞬間に、彼はなるべくして「英雄」となるのです。

「アクシャンの蘇生のメカニズムは、彼の人物像のみならず、彼個人の成長についても物語っています」JohnODyinは言います。「彼は師であるシャーディアの望みに反して、仲間を復活させるための武器を手に取りました。彼には光の番人の規則など、どうでもよかったからです。しかし、自身の決断に直面したそのとき、シャーディアの死に対して報復するのではなく、彼女の人生を讃えるべきだと気づいたのです。復讐から離れて前に進まなければならないことを、アクシャンは知っているんです」



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