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ウディアVGUの初期ビジュアル、そしてゲームプレイとナラティブデザインの進捗報告など。

Dev作者ウディアVGUチーム
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皆さんこんにちは。今回は今年初旬に皆さんがVGU(ビジュアル・ゲームプレイ・アップデート)対象投票で選んだチャンピオン、ウディアの進捗についてのお知らせです。最近の大規模VGUでは毎回進捗報告をしてきましたが、報告自体も好評であるのに加えて、プロジェクトの方向性を調整できるくらい早い段階で素晴らしいフィードバックを得られ、大変参考になりました。まさにウィンウィンというやつですね。

では進捗紹介を始める前に、ウディアを選んだ理由とチームの目標を振り返っておきましょう。ウディアがVGU投票候補に入った理由は、彼がLoLでも残りわずかとなった凄まじく時代遅れのチャンピオンだったからです。スキルセットも10年以上変わらず、古臭く感じられます(同じ歳月を経たチャンピオンでも、たとえばリー・シンのゲームプレイは今でもかなり良い状態にあります)。

これらを踏まえ、チームでは次のような目標を設定しました。

  1. 「型を変える」というアイデンティティと通常攻撃/近接攻撃主体のチャンピオンである点を変えない。私たちはこの点こそがウディアの独自性だと考えています。このため今回のVGUでは「型」と「近接攻撃パターン」にフォーカスし、習熟度が活かせる深みを出し、ゲームプレイを現在の水準まで引き上げていくつもりです。また、ウディアがクールなことをしていると視認できるような明確さも合わせて出していきます(現在のウディアには思わず叫んでしまうようなプレイを繰り出す余地がありません)。
  2. ビジュアル面ではシャーマンの戦士というテーマをしっかりと維持しつつ、最近のチャンピオンに求められる品質水準まで引き上げていきます。目標はビジュアルの改善であって再発明ではない、と考えています。
  3. ナラティブ面では、ゲーム内のウディアを最近の物語で描かれるウディアのイメージに近づけ、さらにフレヨルドとの結びつきを強調したいと考えています。

ではここから先は、ゲームプレイ、アート、ナラティブデザインという3分野の担当者に詳細な報告をしてもらうこととしましょう。

型を変える

Stash “Stashu” Chelluck - ゲームプレイデザイナー

どうも、Riot Stashuです!私からは新生「熊不死鳥男」のゲームプレイについてお話していきます。

かれこれLoL歴10年以上となる私にとって、長年苦楽を共にしてきたウディアのVGUに携われる今回の機会は心からワクワクするものでした。チャンピオンのショップをつらつらと眺めていたあの日、ウディアのスキルセットを初めて見た時の感覚は今でも鮮明に覚えています。全スキルが近接攻撃でULTなし!?狂気の沙汰だ…と。即座に飛びつき、以来私は型と歩み続けています。当初は不死鳥の型を使ってジャングルを回っていましたが、まもなく体力ポーション+猛虎の型スタートのトップレーンウディアに移行。想定外の火力に驚く対面にファーストブラッドを決め続けました。その後は色々できるチャンピオンを使うようになりましたが、ウディアは長いあいだ共に暴れ回った相棒として、私にとって特別な存在であり続けています。

06_29_21_02_the_Udyr.jpg

LoLはウディアがリリースされた当時から何もかも──ただしウディア以外──が変わったかのように感じられますが、彼はそれだけの時を経た今も元気に活躍しています。より速く、より恐ろしくなった現在のLoLの世界で、ウディアは「暴力的なまでにシンプル」なスキルセットのまま戦い続けているのです。人気は年を追うごとに落ちてきましたが、彼の傍らにはいつも一定のファンがいました(競技シーンで活躍する姿を見るようになった最近は特に人気が上がっています)。

確かに完全な近接チャンピオンというのは誰にでも愛されるスタイルではありませんが、ウディアのゲームプレイがいわゆる「時の試練」をしっかりくぐり抜けてきたことに疑問の余地はありません。私たちも、完全近接型ブローラーにはニッチなプレイヤー層が確かに存在していると理解した上で、我らがウディアの特性をしっかりと引き継いでいきます。もちろん「今のゲームプレイが良いのなら、なぜアップデートするの?」と疑問に思う方もいるでしょう。確かにウディアのコアとなる部分は非常に強固なのですが、開発チームでは次の2つの領域に改善の余地があると考えています。

プレイスタイルの幅/ビッグプレイ:ウディアのプレイペースはLv2以降ほぼ同じになります。ULTもなく、他に強力な選択肢もなく、固有スキルも突き詰めれば「スキルを使い続けろ」という内容なので、中~低程度の影響力しかないスキルを繰り出し続けることになり、他のチャンピオンのようなビッグプレイも狙えません。開発チームとしてはこの点にメスを入れ、ウディアの活躍する瞬間を誰でも視覚的に認識できるようにしていくつもりです。

テーマの落とし込み:「動物の精霊を宿せるシャーマン x 格闘技の達人」というテーマは文字で見るぶんには良いものに見えますが、現在はルーンテラとの結びつきが非常に弱く感じられます。ウディアはフレヨルド屈指の精霊たちを宿せるのに、なぜよりによって亀や猩々(しょうじょう)を選んだの?と。もちろん亀や猩々が悪いわけではありませんし、ウディアらしさはしっかり残したいと考えています。ただテーマに少し手を入れられれば、ルーンテラとの結びつきをより強固にし、共に闘ってくれる精霊たちももっと魅力的に描けるはずだ、とチームは考えます。テーマをどう変えるにせよ、ゲームプレイは必ずウディアを輝かせるものにします。

以上をまとめると、ウディアのゲームプレイアップデートはプレイスタイルの幅を広げ(かつビッグプレイを繰り出せるようにし)、テーマをよりしっかりとゲームに落とし込む(こちらはナラティブの項でさらに掘り下げます!)ために実施するものです。ゲームデザインチームではこれを踏まえた上でウディアのコアとなる要素を洗い出し、以下の項目をできるだけ守ることに決めました。

  • スキルセットは型を変える4つの基本スキルで構成される(ULTなし)
  • スキルショット/遠距離スキルや長距離ダッシュを持たない(完全近接型)
  • ビルドに応じて大量のダメージを出すこともタンクになることもできる
  • 優先的にレベルアップさせる型に応じてプレイスタイルを変えられる(猛虎/不死鳥)

大枠が定まったら、次は具体的な仕様の作り込みです。このプロセスではまずチーム内ブレインストーミングでビッグプレイを可能にする案を出しました。結果的に「最初に強化しきった型に応じて強力な永続バフを獲得する」、「型を同時に2つ発動できる」、「ULTで使用中の型に応じた動物の化身となる」など数十個の案が出ています。

案出しの後は各案を精査し、そこから選び抜いた案を作ります。最初に試したのは「4つの型を切り替える部分は同じだが、一定時間ごとに型を”超強化”できる」という案でした。

型の”超強化”案では、型を使用していない間に徐々にパワーが溜まっていき、数分使用しない状態が続くとスーパーチャージ状態となって特別な効果が発動するというものでした。あまり使われない型が超強化されるところにチーム全員がワクワクしたので試してみたのですが、この案には利点と欠点が混在していました。パワー管理の要素がちぐはぐで、やりたいことと反対の結果になる点はイマイチでしたが、超強化された型が使えるようになると非常に面白いことは確認できました。

その後さまざまな”超強化”を試行錯誤していくうち、チームはこの仕組みには特別なところがあると感じるようになりました。現在は使用中の型を再発動すると超強化バージョン(クールダウンあり)が発動するという仕様を試しています。まだ他の案も検討中ですが、今回はまず型の再発動を採用したテスト版を公開してみます。

2つ目のリソースバーは再発動のクールダウンを示すものですが、このスクリーンショットではクールダウンが大幅に短縮されています。

(そして…はい。スキルショットです。コアルールに反しますが試験的に入れてみました。ルールが制約にしかなっておらず利点が存在しないかもしれない、と考えて実際に試してみるというのも開発現場においては有効だったりします。この場合は「完全近接」という制約は必要だと判断し、結果的にルールを遵守することにしています)

次のステップでは、超強化をどこまで広げてもよいのか試していく予定です。単に通常の型が強化されるだけなのか、元の型とは少し違うものになるのか?などですね。

ゲームデザイン側から今回お話できるのはここまでです!なお、今回お話した内容はまだ未確定であり、今後変更になる可能性もあります。個人的には良い方向に進んでいるとは考えています。今回こうして進捗を共有できてとても嬉しく思っています。ご覧いただきありがとうございました!

ビーストモード発動

Justin “RiotEarp” Albers - コンセプトアーティスト

ウディアがリリースされてから幾星霜、その間にルーンテラでは本当にたくさんのことが起こりました。彼には精霊を宿す力で戦うという尖った個性があり、それを可能にするための高い克己心も備えています。しかし彼自身の出で立ちは自然派で原始的、人によっては粗末にも見えるものです(ちょうど修行僧のように)。バカでかい甲冑も、余分な手足も、悪魔の角もなし。あるのはフレヨルドの民にしか持ち得ない、戦闘に対する硬い自信のみ。

4月に最初の模索案を共有して以来、チームでは山暮らしのブローラー(Mountain Brawler)、ワイルドドルイド(Wild Druid)、MMAシャーマン(MMA Shaman)の3案に重点を置くようにしてきましたが、ブログに対する皆さんの反応を見てこの方向性に対する自信は一層深まりました。他の初期模索案、たとえば神聖祈祷師(Deity Invoker)などは「精霊の守護者」スキン製作時のインスピレーションとして使っていきたいと考えています。また、基本スキンは近接攻撃の要素を中心に据えて制作していくつもりです。ウディアはやっぱり物理的に攻撃するチャンピオンですからね!一方で「精霊の守護者」スキンはその名の通り精霊にまつわるスキンなので、ビジュアル面でも精霊のエネルギーを全面に押し出していきます。いずれのスキンも最終的に独自性のあるものになるでしょう。

06_29_21_04_Udyr_First_Spread_riotearp.jpg

こうして基本スキンの方向性が固まり、次に私はウディアが宿す動物精霊のエネルギーをどうやってビジュアルに落とし込むのかを模索していきました。

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ここでの目標は、テーマの持つ要素を3本の柱に整理することでした。自分の中で整理することでテーマの理解を深めようと試みたのです。

  1. フレヨルドの原始的シャーマン:枝角、長い髪、髪を飾る羽根や装飾具で表現。
  2. 動物精霊と通じ合う屈強な近接戦士:ここでは体型に注目しました。強靭だけれど脂肪もあり、筋肉質だけどボディビルダー的ではない体格。手首と足首には飾り気のない綱が巻かれているのみ。これは周辺の空間を確保し、宿している動物精霊を示す役にも立ちます。また枝角も属性(電気、炎など)を表現する上で一役買ってくれます。
  3. 旅を続ける「精霊と歩む者」: アイオニアを旅した経験は、力を制御するための克己心を鍛え、霊的領域との繋がりを強固にしています(ビーズの首飾り、アイオニア式のロープベルト、タトゥー/模様)。

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あらかじめ白状しておくと、上のイラストでは髪型があまり馴染んでいません。これは皆さんが指摘されたとおりです!この絵ではクリーンなスタイルを試そうと、近接格闘の要素を強調するために格闘ゲームっぽくしてみたのですが、結果的にはウディアが持つ流浪のシャーマンという生き方から大きく逸脱してしまいました。ウディアは街じゃなく森で暮らしているはずなので、最終的にはそういうライフスタイルと野生に生きる男のイメージを取り入れるように変更しています。

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その後デザイン全体を詰めていく中で、自分が交信する動物精霊の姿をタトゥーとして体に彫っていたらクールさと独自性をぐんと引き出せるのではないかと考え、実際に組み込みました。また頭部の枝角はシャーマンの視覚的要素として普遍性があるだけでなく、シルエット確立にも大きく貢献してくれました。実は枝角の位置は肩にする案も試したのですが、鎧の一部のように見えてしまうし、頭部よりも面白みに欠けていたので見送っています。あとは枝角の固定方法も色々と模索しました。このほか、体の表面も毛むくじゃらにしています。

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今後はそれぞれの型のビジュアルを探っていく予定です。各型の力強さとフレヨルドの動物の姿はできるだけ強調していきますのでお楽しみに。まだまだ先は長いですが、今回こうして進捗を共有できて嬉しく思います!

ウディアの声を聞け(彼の声だけでいいのか?)

Dana Luery “griddlebones” Shaw - ナラティブライター

ウディアVGUに着手するにあたり、最初にチームで話したのは「既存のウディアの物語は本当に良い」ということでした。Skiptomyluoの短編「その歩みは数多の声と共に」とWAAAARGHboboの「呪われし者の沈黙」はどちらも、ウディアと精霊、人、動物、神、そしてウディア自身のぶつかり合うさまを克明に描き出しています。動物の本能と熟練の技術、物理世界と精霊、氾濫する「繋がり」と氷のような孤独の間でもがきながら歩む者、それがウディアです。彼が生きる不思議な空間では、数多ある自分自身のかけら同士がぶつかり合う。それでも彼はなんとか均衡を保ち、数え切れない他者の声に埋もれてしまった自分自身を探し続けている。

私は、これほどのチャンピオンにリワークなど必要ない、必要なのはアップデートだけだと考えました。

このためウディアの物語はほとんど変えていません。今回私たちが試みたのは、彼という人物を掘り下げ、考え方を理解し、能力のしくみを読み解き、あのように戦う理由を探り、そして彼とフレヨルドの関係性を深く描くことでした。そこで私は「フレヨルドは困難、障害、戦いを通じて成長するもので、この地において平和とは破滅である」という旨の彼の思想を元に「ぶつかり合いの中で均衡を保つ」点を前面に押し出すことにしました。ウディアはフレヨルドの均衡を保つため、肉体の力と精霊の力…そして両者が生み出す圧力を用いるのです。

しかし現在の型からは、フレヨルドのためにフレヨルドの精霊を身に宿して戦っていることが分かりません。現在の型の精霊は、たいていアイオニア的な動物のものです。確かに彼は長年アイオニアで修練を積んできましたが、生まれてから成人するまでの時間を過ごした場所はツンドラ地帯であり、彼の地に住まう神話的存在やそれにまつわる習慣にも深く通じている上、本人も今や故郷に戻っています。ならばスキルのほうもそろそろ彼の故郷に由来するものになってもよいのではないでしょうか?

これについてはいくつかの案を検討しましたが、中でも私がいちばん気に入っている案は型とフレヨルド最強の精霊である半神(ボリベア、アニビア、オーン)を結びつけるというものです。ちなみに半神はこの3体以外にも存在していることをご存知でしたか?物語では少なくとも2体の存在が確認されています。もちろんウディアがそんな半神たちの力を直接身に宿すわけではありません(「呪われし者の沈黙」を読めばそれが筋の悪いやり方だと分かります。少なくともボリベアは力を与えた対象を操る術に長けていますから)。ただ半神たちに似た姿の動物を通じてその強大な力の一部を彼に貸すことは考えられるでしょう。

しかし半神たちが「フレヨルドで最も強力な存在である」というのは今この瞬間の話で、フレヨルドにはより強大な者が存在します。ぶ厚い氷の下に閉ざされた彼らは現在ある集団の監視下にあり、その集団こそウディアが幼い頃に彼の部族を殺した者たちです。本件についてはいずれウディアの物語と繋がることになるかもしれません。

今後は…?

新生ウディアのリリースは2022年を予定しているので、次回の/devブログは年末近く、本制作がスタートしてからになるでしょう。それまでにぜひ皆さんの感想をお聞かせください。気に入ったところ、もっと見たいところ、ウディアらしくないと感じたところなど、ご意見をお待ちしています。最高の「動物シャーマン戦士格闘僧」を完成させるには皆さんの声が欠かせませんから!

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