/dev:チャンピオンプロトタイプ

Meddlerによる

新たなチャンピオンの開発を始める時、最初はコアコンセプトを作成します。この作業にはアーティスト、ライター、ゲームプレイデザイナーが少なくとも一人ずつ参加して、チャンピオンのゲームプレイ上の特徴、個性的な見た目、性格、出身地についてアイデアを固めていきます。

その後は、スキルや、私たちがそのチャンピオンに与えようと考えている長所と短所、想定される技術的な問題への対処方法など、さまざまなアイデアのテストを始めるために、なるべく早くゲーム内でキャラクターを動かす必要があります。もちろん、すべてが予定通りうまくいくはずもありません――テスト中に何度も試行錯誤を繰り返すことが非常に重要になります。時には、チャンピオンのオリジナルコンセプトにあったスキルが意図した通りに機能し、開発中に一度もスキル構成から外れることがない、ということもあります。しかしほとんどの場合、チャンピオンの最終的なスキル構成が決まるまでに、数十にも上るスキル(もしくは少なくとも、それらスキルのバリエーション)が試作されることになります。

テストしてはボツにするという作業を何度も繰り返すので、たとえ有望に思えるスキルがあったとしても、すべてに新たなアートを用意することはしません。たった数日でボツになることが多い試作スキルのために、アーティストから多くの時間を奪うわけにはいかないからです。そこで、新チャンピオンのプロトタイプを作る際には、他のチャンピオンのキャラクターモデルやスキルのビジュアルエフェクト、サウンドなどを改変した、「仮アート」と呼ばれるものが使用されます。

よくできたプロトタイプには、いくつかの要素が備わっています。まずは、はっきりと区別できること(「戦場の霧」から最初に出てきた時に一目で新チャンピオンだとわかる)。次に、新チャンピオンで意図するゲームプレイを表現できていること(アリスターを仮モデルとして使うなら、かなり硬く近距離では脅威になるものの、遠距離から攻撃できる耐久力の低いメイジとは相性が悪いなど)。そして最後は、少なくとも開発しようとしているチャンピオンの持つ雰囲気をいくばくかでも捉えていて、イメージを喚起するようなものであることです。チャンピオンの雰囲気や個性をうまく表現できているプロトタイプなら、プレイテストからより良いフィードバックを得ることができるため、チャンピオン開発チーム全体でイメージを共有し、そこから外れないように方向修正することが容易になります。理想としては、たとえプロトタイプであっても、ルルなら気まぐれでかわいらしく、ゼドなら威圧的で恐ろしく、ブラウムなら協力的で友好的に感じられる必要があります。

理論的な話はここまでにして、プロトタイプ段階のチャンピオンがもともとはどのようなデザインだったのか、またスキルがどう変化していったのかについて、実例を見てみましょう。


まずはナーから!

メガナーのデザインについてはコンセプトの段階で時間をかけ、恐竜やサイ、ライオンなどから発想を得た様々なデザインを試した後、最終的に上にあるゴリラのようなクリーチャーに決定しました。開発中に変更された点はほとんどなく、最終的にリリースされたものともほぼ同じです(いつもこう上手くいくわけではありません)。

しかし、数ヶ月にわたってプレイテストでスキル構成を模索していた間のナーは、大きく見た目の異なるものでした。開発中盤のプロトタイプはこちらです。

ミニナーにはノーチラスを3分の1に縮めて黄金に染めた仮モデルを使用しました。これで通常のノーチラスと混同することはありません。そしてミニナーの個性や雰囲気を表現するために、あらゆるアニメーションの速度を2倍から3倍に上げて、かわいらしくて活発な印象を表現しました。ただし、遠隔攻撃が近接武器から放たれるため、通常攻撃の見た目は少しおかしなことになっています。これはもともと、ミニナーが遠隔攻撃チャンピオンでなかったことに起因しています——彼は近接チャンピオンで、敵を棍棒で殴って攻撃していました。しかし、その状態ではレーン戦でもチームファイトでも苦戦していたので、接近戦に耐えられるように硬くするかわりに、射程を伸ばすことにしたのです。

メガナーには拡大したワーウィックのモデルを使用し、プロトタイプチャンピオンであることがわかりやすいように赤色にしました。また重さと力強さを印象付けるために、一部のアニメーションの速度を遅くしました。ワーウィックを選んだのは、メガナーの獣性と、上半身の大きな体型をもっとも上手く表現できたからです。

ミニナーのスキルのプロトタイプを開発するために、私たちは他のチャンピオンからさまざまなものを借りてきました。下の動画を見て以下を探してみてください。

  • 狩人シヴィアのブーメラン
  • 色を替えたヴェインの「シルバーボルト」(3ヒット系スキルを表すにはうってつけです!)
  • ジグスの「エンジニアボム」使用時の興奮した叫び声(あの超興奮した雰囲気をEに与えるために)
  • マスター・イーの「ハイランダー」時の移動線(軌跡を付けると動きの速いチャンピオンを目で追うことが容易になり、見た目も良くなります)

メガナーにおける「借り物」は以下の通りです。

  • ワーウィックの死亡アニメーションの前半を岩を投げるアニメーションとして採用(ワーウィックは何も投げないので、少し工夫する必要がありました)
  • トリスターナのロケットジャンプの着地時のビジュアルエフェクトと音声(とてつもなく大きなチャンピオンが地面を叩きつける様子を表現するため、メガナーのEの着地はインパクトのあるものに)
  • ウディアの熊の型時の咆哮(プレイヤーに迫り来る危機のイメージを呼び起こす、獣らしいパワフルな音)

最後に、この開発中盤の時点では存在したものの、後に変更されたスキルを見てみましょう。

  • メガナーのWはスタンと通常攻撃をチェインさせる効果を持っていました。しかしスキル構成が詰め込み過ぎに感じられたので、Wを単純化してスキルの仕組みを明快にしました。
  • メガナーのEは着地時に周囲の敵ユニットをノックアップしていました。操作感も素晴らしく(敵を弾き飛ばすのはいつだって爽快です)、テーマにも合っていました(巨体が地面に衝突すれば当然衝撃波が発生します)。しかし、ナーは行動妨害(CC)を持ちすぎでしたし、ジャンプしてダメージを与えるだけでもEは十分に便利で爽快感もあったため、ノックアップは削除しました。
  • この時点でのナーのアルティメットは、のちにタム・ケンチの「丸呑み」に使われることになったスキルです。スキル自体は気に入っていたものの、サブスキルというよりは、チャンピオンの核となるスキルにすべきだと感じられました。ナーの中心に想定されていたのは、半自動で変身して形態を行き来することによる、ハラスとタンク能力の切り替わりでした。「丸呑み」は別のチャンピオンのために取っておいて、その代わり、変身するゲームプレイパターンにふさわしい何かを導入しようというのが、私たちの結論でした。

次はレク=サイです

レク=サイの初期開発コンセプト(Gem LimとChristian Fellの案にもとづきCharles Liuがデザイン)

レク=サイの開発は“陸のサメ”というイメージを表現したい、という思いとともに始まり、与えられていた仮名称も“Burrower(地面に潜る者)”でした。狡猾さと本能に突き動かされ、あなたの下でひっそりと待ち伏せる捕食獣です。この時点では、バックストーリーや個性、性別といった、それ以外の詳細は何も決まっていませんでしたが、このイメージこそが私たちの表現すべき核になるものだと考えていました。

プレイテスト用に、2つの形態にあわせて2つの全く異なるモデルが必要でした。これは形態によって立ち回りが大きく変わるために、「地面に潜るもの」がどちらの形態なのかを常に明確にする必要があったからです。しかし、サメ形態にうまく合うモデルを持ったチャンピオンは存在しませんでした。では、一体どうしたのか?実は、当時まだ開発中だったとあるスキンを借用することにしたのです。

ヴォイドフィズが呼び寄せるサメは私たちが求めていたものにピッタリでした。恐ろしくて、パワフルで、動物的で、おまけにヴォイドの要素まで持っていました。そこでモデルを拝借し、水平に向きを回転させてサイズを少し調整した後、いくつか基本的なアニメーションを作成しました。出来は少し粗くなるものの、私たちが求めていた恐ろしい捕食獣という感覚は間違いなく表現できるはずでした。地上出現中の形態には、紫色のカ=ジックスを使用しました。

皆さんお分かりの通り、サメは思ったようにはいきませんでした。「地面に潜るもの」がどの形態でいるかははっきりとしており、その点は問題ありませんでしたが、かなり小さなサイズで土をかじりながら泳ぐサメは、なんともおかしな姿でした。少なくともプレイテストで笑いのタネにはなったものの、それは私たちが求めていた感情を呼び起こすものではありませんでした。とは言え、最終的なモデルが決まってこのサメにお別れを告げることになった時、正直なところ少し悲しかったです。

レク=サイのスキル構成に関しては、初めから存在していたものが2つあります——それは「震源センサー」と「トンネル」です。スキルの仕組みが似通っていたため、トンネルにはスレッシュのランタンを仮モデルとして使用しました(“これをクリックすると自分が移動する”)。

レク=サイの開発を始めた時、2つの状態の差を明確にするために、潜伏時にはなんらかのステルス能力を与えたいと考えていました(例えばイブリンのような)。しかし、ステルスを追加すると、スキル構成があまりにも詰め込み過ぎになってしまうことが、すぐに明らかになりました。

下の動画にあるように、残りのレク=サイのスキル構成については、当時はまだ未定でした。大きく変更されたものの一つは潜伏時のQで、これはもともとフィズのQのような「すり抜けるダッシュ」でした。しかし、スキル構成にトンネルが追加されて正常に機能するようになると、レク=サイが戦闘中に使用できる移動スキルはそれだけで十分なことがわかりました。他に大きく変更された部分は「襲撃」で、これは当時は単に形態を切り替えるだけでノックアップはせず、逆にアルティメットが、ノックアップと移動速度の遅いステルスと対象指定不可状態化を組み合わせたものでした。ノックアップは良かったものの、これは基本スキルとして用意するべきであり、そしてたとえアルティメットだったとしても、レク=サイにステルスや対象指定不可状態を与えるのはよくないという結論に私たちは達しました。


最後にクレッド

クレッドは「軽騎兵」というアイデアから始まりました。セジュアニ(また程度の差はあれどヘカリム)とは違って、騎乗したすばしこいキャラクターが狙いでした。最初の仮モデルにはミニチュアのピンクのヘカリムを使用しました——通常のヘカリムとも違いが明確で、色を替えてサイズを小さくすることで、狙っている雰囲気を表現できるはずだと考えました(すばしっこく、かわいらしくて、シリアス過ぎない)。

このプロトタイプは、明快さについては狙い通りでしたが、個性がまるで感じられませんでした。これはクレッドの開発に携わっていない外部のチームから得られたフィードバックにおいて特に顕著でした。私たちが狙っているイメージやコンセプトの核が明確ではなかったのです。「クレイジーでどこかおどけたキャラクターがキュートな生き物に乗っている」という私たちの持つクレッドのイメージが、まるで伝わっていませんでした。

しかし、非騎乗時の形態にはナーを仮モデルとして使用していたため、そこからアイデアが浮かびました——2つのチャンピオンのモデルを組み合わせて、私たちが求めているものをシミュレートできないだろうか?過去に試したことはなかったものの、一つのユニットを別のユニットに結びつけて動かすことは、技術的には可能でした(ゲーム内に登場した最初の例は、シンドラが向いている方向に挙動を左右されない、彼女のダークスフィアです)

結果はどうだったかというと、私たちは2つのモデルを結び付けることに成功し、少なくともこのケースに関しては、両方のアニメーションを再生させるだけで非常に見栄えがいいものができあがりました。ヘカリムが走っている上でナーが走っている様子は騎乗しているアニメーションのように見え、両者が同時に攻撃を繰り出す姿も自然に感じられました。特殊コマンドの一部は一致しませんでしたが、ダンスは驚くほどシンクロしていました。この仮モデルを投入したことで、クレッドに対するフィードバックや感想は劇的に改善しました。

この時点では、クレッドのスキルにはまだまだ変更が加えられている最中でした。固有スキルとEは完成版のスキルと同じでしたが、Qは大きく異なり、その一部はのちにWに組み込まれることになりました(連続近接攻撃)。Wは即座に発動する遠距離範囲ハードCCで、テストによっていまいち噛み合っていないことが判明しました。そして最後に、このバージョンではクレッドのアルティメットにリヴェンの「追放者の剣/ウィンドスラッシュ」をそっくりそのままコピー/ペーストしたものを使っていました。これは別にリヴェンのアルティメットをそのまま実装しようとした訳ではなく、クレッドのスキル構成の他の部分をテストするために彼をゲーム内で十分に機能させる必要があり、それには仮のアルティメットが必要だったからです(アルティメットなしでは、アルティメットを持っている相手に対してレベル6以降まったく歯が立たなくなってしまいます)。


最後に(それとバードの没テイク)

チャンピオンのプロトタイプの開発と、その過程で彼らが持っていた違うスキルについてのお話ししてきました。チャンピオンの開発過程の詳細をお楽しみいただけたなら、幸いです。最後に、ちょっと別の動画を見てみましょう。映っているのは開発中のバードで、この時点でのミィプに対するアプローチは“ハーメルンの笛吹”や“ピクミン”から発想を得たものでした。彼らは一列になって常にバードのあとをついてまわり、試合終了時には最大で8体にまで増える予定でした。バードの開発に携わっていたデザイナーがここで気づいたのは、コードを1行変えるだけで、下にあるような素敵なエフェクトを作れることでした。リリースしようと考えたことはありませんが(1体のチャンピオンに対して、「同時に画面に表示されるものの量」が多過ぎます)、操作していてとてもクールだったので、皆さんにも紹介したいと思います。


3 years ago


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