/dev:Ghostcrawler「深み vs 分かりやすさ」

Ghostcrawlerによる

現在進行中のランク戦システムのアップデートを受けて、今回は私たちがLoLのデザインについてどう考えているのか、さらには、誰のためにをデザインしているのかということをお話しします。

ゲームデザイナーたちは難しい専門用語をたくさん使って「深み」や「興味深い決断」について語り、ライアットは完成を目指して歩む終わりのない道のりについて饒舌に語る。それはなぜでしょうか?


デザインと問題解決

非常に基本的な観点からいえば、ゲームとはプレイヤーがある特定の目標を達成しようとする行為だと考えることができます。その目標に対してゲームは数々の「困難」を与え(そうでなければゲームは5秒で終わってしまいます)、プレイヤーは様々な「ツール」を使ってその「困難」を乗り越えようとします。LoLで「困難」にあたるものの中心は、あなたの目標達成を阻止しようとする相手チームのプレイヤーであり、さらにはタワーやミニオン、ジャングルモンスターなどでしょう——「ツール」とはQWERのスキルやサモナースペル、アイテムなどになるでしょう。

常にあらゆる障害に対処できるリスクのない「正しい」答えがあり、自分がそれを知っているとしたら、一時的には自分が賢く感じられて気分がいいかもしれません。ただし、長い目でみれば、そんな誰にとっても最適解が決まっているゲームは新鮮味を失い、退屈になってしまうでしょう。答えが決まっている「決断」は面白くありません。デザイナーが「興味深い決断」と呼ぶものは、「「明確に正しい答え」が存在しない決断」です。「どのチャンピオンを使うべきか?」という疑問には、一般的に言って「明確に正しい答え」がありません。「ラストヒットを狙ってみるべきか?」には正しい答えがありますが、ラストヒットという行為自体が簡単なものではなく、さらにその他の競合する複数の優先事項によってこの問いへの答えも変わってくるので、まだ人を引きつける魅力があると言えます。「どのルーンを使うべきか?」には正しい答えがありますが、それは明確なものではないので、多くの場合は単にネットで検索することになります(ルーンについては後ほど詳しくお話します)。

ゲームに多くの興味深い決断が存在していれば、それは深みがあることになります。そこには常に学ぶべき新たな何かが存在します。どのような状況でも、常にもっと良い選択肢があったのではないかと考えます(「テレポートは温存しておくべきだったか?そもそもテレポートをサモナースペルとして選ぶべきだったか?」)。夜にLoLを数試合プレイして、さらにもう一試合プレイした時、あらゆるプレイヤーの取る選択が違うことから異なる結果が生まれ、その試合は新たな体験となるのが理想です。


深みと複雑さ

多くの深みを持たせれば、ゲームデザインは複雑になりがちです。しかし、必ずしもそうだとは限りません。囲碁は「ルールはシンプルだが奥が深い」とよく言われます。それとは対照的に、「モノポリー」のようなボードゲームには複雑なルールがありますが、勝敗の大部分がサイコロの目で決まってしまうために、あまり深みはありません。

    LoLの初期の命題の一つは(これは私がライアットで働き始める前にまで遡ります)、「分かりやすさのために深みを犠牲にしない」というものでした…開発チームがLoLで実現しようとしていた深みを失うことを恐れ、LoLを「誰でも簡単に学べるようなゲーム」にはしないと決断したのです。

深みのある複雑なゲームには(その一つがLoLですが)、「ゲーム自体を学ぶことの難しさに圧倒されてしまう」というリスクがつきものです。LoLというゲームがこのカテゴリーに該当していることに、多くの人は異論を唱えないと思います。分かりやすさ(新規プレイヤーがゲームを気軽にプレイできること)は、往々にして深みと相反することになります(深みがあれば、ゲームに熱中しているプレイヤーが退屈し、プレイをやめてしまうようなことはなくなります)。開発者たちは、この矛盾に複数の方法で対処することができます。例えば、ゲームプレイの導入部分をとっつきやすくしたり(優れたチュートリアルなど)、複雑になり過ぎないように常に気をつけたりします。しかし、LoLはそれをしていません。

LoLの初期の命題の一つは(これは私がライアットで働き始める前にまで遡ります)、「分かりやすさのために深みを犠牲にしない」というものでした。たしかに、世の中にはもっと複雑で、おそらく深みももっとあるゲームが存在しています。それは構いません。私が言いたいのは、ライアットは戦略として、開発チームがLoLで実現しようとしていた深みを失うことを恐れ、LoLを「誰でも簡単に学べるようなゲーム」にはしないと決断したのです。開発者として、分かりやすさと深みの間の綱渡りを決断することは可能です。LoLも時にはそれを行ないますし、これを非常にうまくやっているゲームも存在します。しかし、それは「機会費用」です――2つの目標を同時に達成しようとするほど、どちらか1つを完璧なものにするために使える時間は少なくなります。

ひとことで言えば、LoLはコアゲーマー向けのゲームです。これは、コアゲーマーとは何なのか、逆に非コアゲーマーとは何なのか(さらにはカジュアルゲーマーとは何なのか)を定義しなければ理解しにくい表現ですが、これらの用語は非常に曖昧であり、レッテル貼りにも繋がります。しかし、私たちが言いたいのはこういうことです——LoLのプレイヤー人口を増やすために、このゲームを「簡単で手に取りやすいもの」にしたくはないのです。よく、Ryze(ライアットの共同創設者であるBrandon Beck)は、LoLのことを、「結果的に巨大になったニッチにかろうじて着地できたニッチな製品」だと表現しています。


現実的には何を意味するのか

理論的、哲学的な話が続いたので、これが実際のゲーム内ではどう表れるのかを、ゲーム内の機能を例に取って説明します。

  • ドレイク:パッチ6.9でドラゴンのデザインを見直し、それぞれに異なるバフを持ったエレメンタルドレイクのうちの一つが発生するようになりました。デザインのやり直しを行った詳細な理由はこちらで読めますが、全体として見れば、解決済みと感じられていた問題に「深み」を与えようとする試みでした(あの時点におけるLoLのドラゴンは、スタック数またはバロンの有無によって、次のドラゴンが「必要か不必要か」の判断基準があまりにも固定化されていました)。この変更はゲームに複雑さを加えましたが、同時に深みも加えました。調整はしばらく続くでしょうが、全体的には良い変更だったと思います。LoLについて学ぶことの負担が増えたとしても(または適応するために既存のプレイヤーに負担を強いたとしても)、ドラゴンは再び「興味深い決断」になりました。


  • ダイナミックキュー: パッチ6.1(英語サイト)では、新たなチャンピオン選択が導入され、ダイナミックキューも登場しました。私たちはこの機能について多くを語りましたが(そして多くの意見を聞くことにもなりました!)、現在は次のシーズンでどうすべきかを検討しているところです。この投稿で特に私が伝えたいのは、より大人数のプリメイドでランク戦をおこなえるようにする動機についてです。繰り返しますが、私たちの目標の一つは深みを与えることです――分かりやすさを高めることではありません。一部のプレイヤーは、この機能自体、またはこの機能がゲームに与えた影響に不快感を抱き、これはフレンドとプレイしやすくすることによって、LoLをもっと「カジュアル」にしようとした(そうすることで、より多くのプレイヤーをゲームに呼び込もうとした)のだろうと考えたようです。しかし、それは私たちの意図とは異なります。

    LoLのスキルレベルの最高峰であるプロシーンでは、チームメンバーは固定されており、彼らは何度も一緒にプレイします。このような状況では、事情がまるで違ってきます。新たな戦術や新たなチャンピオン構成すら生まれ、さらにチームと略語でコミュニケーションを取るようになります。チーム内には定評のあるショットコーラー(試合中の重要な決定を行い、味方に指示を出すプレイヤー)がいて、誰もがそのプレイヤーに異を唱えるべきではないと理解しています。これは、チームとして以前に同じ状況を経験したことがあるので、単に5人のスキルの高いプレイヤーとしてではなく、組織された集団としてどう行動すべきかがわかっているからかもしれません。プロでなくても、大会やランクチーム機能があれば、このような経験は可能です。ライアターの多くは、社内で行われるRumbleで同様の経験をしています。ここに難しい問題が存在します。プリメイドのチームを作れば多くのLoLプレイヤーに新たな体験の可能性が開けますが、ほぼすべてのLoLプレイヤーにとって、プリメイドチームを作るのは極めて難しいことです。

    協力も取れず、コミュニケーションすら取れないようなランダムなプレイヤーの集まりではなく、チームとしてプレイする手段を追加すれば、ゲームに大きな深みが生まれます。リリース時点では、ダイナミックキューには多くの問題があり、そのいくつかは今でも残っています。しかし、導入自体には立派な目的があったのです。それは、新たな試合に臨むたびに新しいプレイヤーとチームを組み、一から意思を通わせ合い、コミュニケーションとプレイスタイルを構築しなければならないことによって「必然的に戦術が制限されてしまう」という問題を解決することでした。

    私たちの目標はほぼ常に変わらず、ほとんど解決されてしまっているシステムを未解決にすることでゲームに深みを与えることなのです(理想的には解決不可能にすることです!)
  • ルーン:最後に、まだ満足な解決が見出せていない、小さな例についてお話しします(小さいとはいえ、ご期待ください!)。ルーンは元々2つの理由からLoLに追加されました。それは、新たなサモナーレベルに到達する動機と報酬を提供するためと、チャンピオンやアイテムの選択に加えて、ゲーム開始前に自分の「キャラクター」をカスタマイズできる方法を提供するためです。ルーンがサモナーレベルを上げることに対する十分な報酬になっているかどうかや、2016年以降のLoLにおいてレベル上げにどれだけの重要性があるかは議論の余地がありますが、ここで触れたいのはそこではありません。私が言いたいのは、ルーンがカスタマイズにおいて「興味深い選択」を提供できているかどうかです——私はできていないと思います。新たなルーンの組み合わせに挑戦しようと思うプレイヤーはほとんどいませんし、仮に挑戦したとしても、多くはすでに確立されたものよりも劣っています(もしくは、そう思われています)。主な原因は、ルーンが自動効果のステータスであり、熱心なプレイヤーたちと彼らが提供する大量のデータがあれば、固定値の魔法防御ルーンと伸びゆく魔法防御ルーンのどちらが良い選択になるかが、簡単に突き止められてしまうからです。

    ルーンはかなり複雑なシステムですが(これは、ルーンコンバイナーのような廃止されたメカニズムや、ルーンにまだティアが存在しているなどの、いずれ廃止されるべきメカニズムを除いたとしてもです)、大して深みはありません。良く言って解決されたシステム、悪く言えば蛇足で、深みを持たせるためにアップデートするか、もしくはゲームから完全になくしてしまうべきでしょう。前者の「ルーンは複雑だが深みがない」という問題はルーンをもっとクールにすることで解決を試みますが、もうお察しのように、私たちはルーンをより解析しにくくして、個々のルーンをチャンプや試合ごとの状況に依存するようにして、答えが「AかBか」ではなく、「それは場合による」や「好みのプレイスタイルによる」になるようにしていくつもりです。ただし、新たなルーンシステムの発表や、それについて意見を聞いてみることが、この投稿の意図ではありません。私は、「深みがあれば複雑さは許容できる」という私たちの持つ大きなデザイン哲学に、それが当てはまっていないことを確認したいのです。なぜなら、現在のルーンには深みがないとほとんどの人が認識していると思うからです。


まとめ

私たちの目標は、変化のための変化を起こすことでも、LoLの複雑さに恐れをなす新規プレイヤーたちがゲームを簡単に学べるように助け舟を出すことでもありません。そうではなく、私たちの目標はほぼ常に変わらず、ほとんど解決されてしまっているシステムを未解決にすることでゲームに深みを与えることなのです(理想的には解決不可能にすることです!)。ルーンとダイナミックキューは、私たちが常に正しいわけではないということの好例ですが、それでも私たちは、より意義のある深みを求めて決断を行います。

このような議論を行うと、そんなことは無駄で、コミュニティーは賢いからすぐにすべてを解析してしまうと異を唱えるプレイヤーが常に一定数存在します。ある程度は正しいのかもしれませんが、それに対する妥当な反論としてチャンピオン選択に話を戻したいと思います。弱いチャンピオンや強過ぎるチャンピオンが存在しているのは確かでしょうが、そうした状況を受けて頻繁にゲームをアップデートしますし、多くのプレイヤーはチャンピオン選択にまだまだ意義があると感じています。どのポジションをプレイするのであっても、常に複数のチャンピオンが選択可能ですし、それで勝利することもできるはずです(もし、それができていないなら、それはデザイン上の欠陥です)。このレベルの自由度をLoLの他の多くの選択肢でも実現できれば私たちも大満足ですし、プレイヤーも今まで以上にゲームを楽しめるはずです。LoLに挑戦してみようと思っている新規プレイヤーについては、そうですね——このゲームの深みにハマって複雑さも楽しんでもらえたら嬉しいですね。

皆さんからのご意見を楽しみにしています!


3 years ago

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