奈落の底へ:ダークスタースレッシュの開発

bananaband1tによる

何年もの間、プレイヤーたちはスレッシュで#lcsbigplaysや#bronzebigplaysのようなプレイを披露していました。コミュニティーの「フック街の大王」に対する愛は絶大で、彼は常に世界でもっとも使用されるチャンピオンのトップ10に位置しています。スレッシュにはプレイヤーがチャンピオンに求めるあらゆるものが備わっていましたが、一つだけ欠けていたものがあります――それはレジェンダリースキンです。


俺こそが虚無

寒い(南カリフォルニアにしては)2月の午後、プロダクトオーナーのPaul “Pabro” Bellezzaは特別なリクエストを受け取りました:「君のチームでスレッシュのレジェンダリースキンを作ってくれないか?」

Pabroは次に行われたチームのミーティングで新プロジェクトについて話しました。「スレッシュは正真正銘の悪魔で、魂を集めて回るサディストです」とPabroは言います。「どんなスキンを作るにしても、この特徴を100倍にしてやろうと思いました」そして彼は一週間でコンセプトを仕上げるためにチームを招集しました。ミーティングの最後に、Pabroはチームに困難な挑戦を投げかけました——このスキンの制作には、通常のレジェンダリースキンの約半分の時間しか割り当てられないと。

彼らは承諾しました。

それから1週間、約20人が様々なアイデアを持って戻って来ました。「蜂使いのスレッシュ」も少しの間考慮されましたが、Pabroが求めていた恐ろしさを喚起するには十分ではありませんでした。その代わり、別のアイデアが彼らの注意を引きました——時間の流れと重力を自在に操り、犠牲者の魂をブラックホールに集めて回る古代の宇宙の王——ダークスタースレッシュです。アイデアの中から投票を行い、ほぼ満場一致でダークスターが選ばれました。

蜂使いのスレッシュとダークスタースレッシュ


心地よい苦闘

方向性が決まると、次のステップはダークスタースレッシュが具体的に何者なのかを探ることでした。「私たちは部屋に集まって、ダークスタースレッシュの動機は?彼のパワーの源は?彼は何でできているのか?といった疑問に答えていったんです」とクリエイティブリードのMatthew "Popstar Urf" Manarinoは言います。

ホワイトボードにアイデアを描きながら何度も議論を重ね、彼らはダークスタースレッシュの物語を紐解いていきました。「スレッシュのブラックホールは彼とは別の独立した存在で、彼がエサを与えています。彼の目的はすべての存在を終わらせることです——単に嫌なやつなのではなく、それで彼自身も死ねるからなんです。彼にとって、あらゆる存在がブラックホールに飲み込まれる瞬間は歓喜の瞬間なんです」とPabroは言います。ストーリー部分が確定したことで、チームがデザインの細かい部分やゲーム内への実装に取りかかる助けとなりました。

Hellsternによる最初のコンセプトアート

この頃、コンセプトアーティストのElena “Hellstern” Bespalovaはダークスタースレッシュのコンセプトアートの下書きを開始しました。彼女の二回目のコンセプトアートでは、スレッシュの頭の周りに渦を巻く銀河が現れていますが、この時点では天空の外套をゲーム内で星のように見せられるかどうかはまだ不明でした。「スレッシュはかなり初期のチャンピオンなのでモデルのポリゴン数が少なくて、かなり大変でした」とHellsternは言います。Hellsternは3Dやビジュアルエフェクトのアーティストたちと合流し、一緒にダークスタースレッシュの基本モデルに渦を巻く宇宙の物質を結合させました。何度か試したのち、彼らはデザインの実現は可能だと結論づけました。

開発開始から4週間で、ダークスタースレッシュのビジュアルの方向性が決まりました。

Hellsternによる二回目のコンセプトアート


肉体は牢獄

HellsternはキャラクターアーティストのRyan “Ribtibs” Ribotとともに、ダークスタースレッシュの2Dコンセプトアートを3Dの恐怖の存在へと変える作業を開始しました。キャラクターモデルは複数のポリゴンからできています。「これらのポリゴンを適切な位置に配置することが、モデラーとしての私たちの仕事です。機械的な作業のように聞こえますが、実際には、むしろ粘土をこねるような作業(※英語動画)です」とRibtibsは言います。彼らは20種類以上のバージョンを作成し、最終的にスレッシュらしさと天空の恐怖のバランスが取れた一つのモデルに決定しました。

初期および最終バージョンのダークスタースレッシュのモデルと最終モデルに色をつけたポリゴンレイオーバー

開発初期には、ダークスタースレッシュには赤を中心とした色が使われていた。しかし、このカラースキームはブラッドムーンのバージョンとの違いを明確にするために変更された。

ダークスタースレッシュのボーンストラクチャー

スレッシュのモデルがまだ開発途中の段階で、テクニカルアーティストのJue “Kaolala” Wangは不吉な星のアニメーションの準備に取りかかりました。Kaolalaはデジタルボーンを作成して、ダークスタースレッシュの体の中で繋ぎ合わせました。ボーンを配置したら、Kaolalaはそれをモデルに繋ぎ、体のどのパーツに影響するのかがわかるようにしました。これでアニメーターがスレッシュの腕の中のボーンを動かせば、モデルの腕も一緒に動くようになります。

すべてのアニメーション(※英語ページ)の作り直しは、レジェンダリースキンの制作においてもっとも時間がかかる部分ですが、開発期間は残り2ヶ月しかなく、時間は貴重でした。そこで彼らは考えました——オートアタックがMadlifeのフックほど重要だと感じられなくても、両方に同じ時間をかけるべきなのか?もっともインパクトを感じる瞬間は何なのか?熟慮の結果、一から作り直すのではなく、強いインパクトが感じられる瞬間に重点を置きながら、スレッシュの既存のアニメーションに磨きをかけることにしました。

スレッシュがフックを当てる瞬間を強調するために、アーティストたちはビジュアルエフェクトに注目しました。

ダークスタースレッシュのリコール


ダークスタースレッシュにレジェンダリースキンを出すならリコールのアップデートと新たな「エモート」――挑発、ジョーク、笑い、ダンススキルなど、相手をからかう時に使えるアニメーションのあれこれ――が必要です。これらはゲームプレイのメカニズムには関係しないので、アニメーターのDrew “sandwichtown” Morganはこれを使って、スレッシュの破滅的で全能という人格をさらに強調することにしました。

例えば、不吉な星が本拠地に戻る時、彼はポータルの中にフックを投げ入れて、それがかかった何かに向かって自らを引き寄せます。しかし、彼は通常のリコールポータルではなく、自分専用のブラックホールを出現させる事で、彼が宇宙を完全に支配していることを示します。

カエルのジョージ(2016~2016)は破壊されるために生まれてきました。彼の旅立ちはダークスタースレッシュが万物を飲み込んでしまうことの証です(ご心配なく。その後もジョージの姿は目撃されています)。


無限の彼方

ダークスタースレッシュには大量のビジュアルエフェクト(VFX)※英語ページ)が使用されています。これらすべてをオフにすると、体と浮かんだ頭だけが残ります。ちょっと見ただけでは3DモデルのアニメーションとVFXの区別がつかないでしょう——違いを見分ける方法の一つは、ベースモデルのランタンとダークスタースキンのブラックホールを比べてみることです。

ベースモデルのスレッシュのアニメーションが適用されたランタンとダークスタースレッシュのVFXのブラックホール

オリジナルのスレッシュの魂の容器は、一定の揺れ方をするアニメーションが適用された3Dモデルです。ダークスタースレッシュのブラックホールは、個別に動かすことができる小さな手描きのパーティクルで作られたビジュアルエフェクトです。VFXを使用することでアートの自由度が拡大し、スレッシュのブラックホールや銀河の外套、左手、頭の触手、スキルのパーティクルにリアルタイムで生成されるカラフルな渦を作り出せました。

リーグ・オブ・レジェンドにはブラックホールに似たものが存在しなかったので、VFXアーティストのAdam “Riot AdamUnicorn” Kupratisは他のゲームから着想を得ようとしました。テレビゲームのブラックホールがどのように機能しているのかをより深く知るために、ブラックホールタイプの能力を真似することから始めて、これによってスレッシュのブラックホールの明確なアイデアが得られました。AdamUnicornは開発開始から数週間の内にペイントやリグの作成を開始しましたが、ダークスタースレッシュのブラックホールが完成したのは、PBEで公開されるわずか一週間前でした。

AdamUnicornは、ダークスタースレッシュのVFXの制作は特に難しかったと言います。「なぜなら、アイデアが巨大だったからです——天の川よりも大きなコンセプトでした。それを遥かに小さな規模でクールに見せるのは、非常に難しい作業でした」

開発期間中、ダークスタースレッシュの宇宙外套は80種類以上のバージョンが作られました。


苦痛の甘い調べ

ダークスタースレッシュは宇宙的な恐怖の存在に見えるようになりましたが、音はまだそうなっていませんでした。VFXを参考にしながら、オーディオデザイナーのBoon “Boondingo” Simはライアットのサウンドライブラリと彼のサウンド生成ソフトウェアのコレクションから、スレッシュのオートアタックとスキルに合うサウンドの素材を探しました。クールなSFの効果音(SFX)を見つけるのは簡単でしたが、難しかったのはそれを「縛鎖の看守」らしさが出るように変えることでした。

「一番気にしていたのはゲームプレイへの影響です。音に関する基本ルールには必ず従っている必要がありました。プレイヤーは何が起こっているのかを音で判断するからです」とBoondingoは言います。チームはレビューのミーティングで、他のスキンやチャンピオンに類似しすぎている音がないか聴いてみました。そしてフィードバックを受けて、宇宙の征服者が間違ってヴェル=コズの効果音を盗んだりはしていないことがわかりました(魂は別ですが)。

ダークスタースレッシュの音声スクリプトを仕上げるためには、スキンチームとライターたちが力を合わせました(この時点でPBEのリリースまであと6週間でした)。Boondingoは近くにあるスタジオで1日を過ごし、オリジナルのスレッシュの音声を担当した声優とボイスディレクターと一緒に音声の録音を行いました。このセッションのあと、Boondingoは録音を聞いてセリフの出来を評価し、もっとも強く感じられたものを選択しました。

理由はわかりませんが、声優が人間っぽく聞こえ過ぎていました。そこで、SFの悪役やホラー映画を参考に、Boondingoはオリジナルの録音の上にディストーション効果を重ねて、別世界の恐怖を表現する声へと変化させました。

オリジナルの、人間の録音:

極悪な存在に聞こえるよう声を低く調整:

宇宙で声がこだましているかのようなリバーブ(エコーのようなもの)とディレイを追加:

ブラックホールに吸い込まれるように、フェードするリバーブを徐々に深くする:

声がプレイヤーを引き込む感じを出すために、リバーブの最後をリバースして各セリフの最初に配置:

悪の存在には恐ろしいサウンドトラックが必要です。作曲家のEdouard “Ed the Conqueror” Brenneisenは、開発の初期段階からダークスタースレッシュのテーマ曲の制作を始めました。Ed the Conquerorの作業風景は下のビデオをご覧ください。

最終バージョンの曲を聞く


破滅の始まり

ダークスタースレッシュのPBEリリースまで4週間となりました。オリジナルのスレッシュのモデルとアニメーションも複雑でしたが、ダークスタースレッシュのモデルとアニメーションはそれよりさらに複雑でした。そのため、品質分析を担当するBrittany “Riot Galetta” Gleiterは、VFXやSFX、音声が完成する前にこの「天空の恐怖」のプレイテストを始めました。

Galettaは品質保証チームと協力してシステマティックなテストを行い、ゲームプレイに影響を与えるバグがないか探しました。いくつかのバグが見つかりましたが、どれも大幅な修正無しに対応することが可能でした。

Galettaは不具合を見つける以外にも、スキンとしてのダークスタースレッシュの品質チェックを行いました。彼女は以下のような質問に答えました——このスキンのどこが好きなのか?欠けているものは?このスキンを購入して満足できるのか?開発の大詰めとなる最後の数週間はGalettaのフィードバックが役に立ちました。そしてとうとう、ダークスタースレッシュはルーンテラの世界に破滅をもたらす準備が整いました。

ダークスタースレッシュは2016年6月16日にライブサーバーにリリースされました。


宇宙の営みそのものを止めてやる…

次の日、ダークスタースレッシュの開発チームは午後にリラックスするためにプールパーティーに向かいました。切り詰められた期間内にレジェンダリースキンをリリースするのは大変な作業でしたが、彼らは不可能をやってのけました。ダークスタースレッシュがサモナーズリフトを恐怖に陥れ、いよいよ祝杯をあげる時がきたのです。

しかし、パーティーは長くは続きませんでした。プールに向かうとすぐに、Pabroにオフィスから電話がかかってきました——「ダークスタースレッシュのバグはもう見た?」

品質保証チームからのバグの映像 (プレイヤーの視点から見る ※英語動画)

多くのプレイヤーがダークスタースレッシュを購入して、スキンは数百万試合で使用されることとなり、すぐに重大な問題があることが発覚しました。相手チームのプレイヤーが一度倒されて復活した後のダークスタースレッシュに最初に出会う時、VFXを読み込む際にそのプレイヤーの画面が毎回フリーズしたのです。この問題は主に高性能なビデオカードを持たないプレイヤーが影響を受けていました——ダークスタースレッシュの渦を巻く恐怖が、一部のプレイヤーのフレームレートを忘却の世界へと陥れていたのです。

リリースされてから24時間経たないうちに、ダークスタースレッシュは使用停止になりました。

外出は切り上げられ、チームはオフィスに戻りました。敵チームのみに発生するという深刻なバグはこれまで誰も見たことがなく、このバグが品質テストで見つけられなかったことが驚きでした。彼らは週末を通して作業を行い、ビデオカードの負担を減らすためにダークスタースレッシュのVFXを最適化しました。4日間休みなく作業を行い、宇宙の完全なる破壊を求めるスレッシュは復活しました。

対策が見つかったあとも、フラストレーションと打ちひしがれた気持ちが残りました。「ダークスタースレッシュは非常に意欲的な試みであり、全員が一生懸命に努力したあとにこんなことが起こったので、とても辛い気分でした」とGalettaは言います。それでも、彼らは成し遂げたことを誇りに思っています。複数の異なる作業を同時に進行させたことで、チームはレジェンダリースキンを以前のほぼ半分の時間で制作しました。精神的にも肉体的にも大変な作業でしたが、それでもやり遂げたのです。

「振り返ってみると究極の試練を受けているようでした」とPabroはジョークを言います。「でも、既存のスキン作成プロセスを見直して、チームとしてこれまでのやり方にとらわれない考え方ができるようになったんです」

アーティストのVictor “3rdColossus” Mauryは、ダークスタースレッシュのスプラッシュアートで宇宙的破壊の絶望を表現しようと考えました。初期の作品に行われた変更には、スキンの開発で体験した困難さが反映されています。プロセスを振り返って、3rdColossusは言います。「時には辛くもありましたが、私たちは大きなリスクに挑みました。すべてを振り返ってみて、それを誇りに思っています」


2 years ago


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