ORIGINS:ヤスオ

bananaband1tによる

ノクサスの放浪者から大地のメイジまで、LoLの136体のチャンピオンにはそれぞれの始まりがあります。これはヤスオの物語です。


型を破る

モルガナなら堕天使、トリンダメアなら蛮族、ラムスならみんな大好きアーマージロなど、LoLのチャンピオンの多くは一般的なキャラクターの“モデル”に基づいて作られています。チャンピオンの数が増えるにつれて、残っているモデルの数は少なくなっていきます。開発者たちはひねりを加えたり、モデルに頼らずに開発を行おうとするので、新しいチャンピオンはクレッドやカミールのように、どんどんニッチなキャラクターになっています。

しかし、2012年当時は、まだ使用されていないキャラクターのモデルがいくつか残されていて、そのうちの一つが侍でした。ヤスオより少し前にマスター・イーがリリースされていましたが、彼の奇妙なゴーグルと飛びかかっていくプレイスタイルは、剣を操って舞う戦士というものではありませんでした。「マスター・イーは“どちらかというと侍っぽい”といった存在でした。もっと本格的な侍を作りたかったのです――単に『剣を持った男』ではなく、侍と感じられるチャンピオンを」と、ゲームデザイナーのBrad “CertainlyT” Wenbanは言います。


破滅への道は意外と近いものよ…


ヤスオ コンセプトアート

テレビゲームや映画に登場する侍は、主君のために人生のすべてを捧げる剣客という表現が最も一般的です。主君が亡くなったり一族から追放されてしまうと、侍にとっては不名誉となり、その存在意義が危うくなります。侍が生きる意味は、主君に仕えることと戦士としての身分にあります。しかし彼はその両方を失ってしまいました。これによって彼は孤独な存在となり、新たな生きる意味を見つけるために世界を放浪することになります(たいていは酒におぼれながら)。

このような主君を失った侍は“浪人”として知られます。

「この浪人を、テーマにしようと決めました。」シニア・コミュニティースペシャリストのRob “Ransom” Loは言います。「なぜなら、侍のジャンルの中でも異なる切り口が得られますし、より共感しやすい存在だと思えたからです。」別の言い方をすれば、人生において進むべき道に迷った経験を持つ人なら多いでしょうが、伝統的な侍のように厳しく規律を守り、奉仕の精神を体現しているような人はほとんどいないからです。

ヤスオの物語は、才能がありながらも激しやすい性分の侍が致命的な過ちを犯し、アイオニアを離れざるを得なくなる物語です。

ノクサス軍の侵攻が進む中、今代では初めて伝説的奥義「風刃術」を会得した唯一の門弟として、ヤスオは主君を護衛する任務を与えられます。しかし、彼は単純にも、自らの能力によって戦況を変えられると考え、主君のもとを離れて戦地に向かいます。

戻ってきたヤスオは、「風刃術」によって主君が事切れているのを発見します…。

同輩たちはヤスオが犯人だと非難したため、彼は力ずくでアイオニアを脱出し、真犯人を捕らえ裁きを受けさせようと旅に出ます。ヤスオの兄、ヤイチロウ(原文ではYone)が彼を追い、ついに捜し出した時(英語ページ)、ヤスオは決断を迫られます。剣を置き兄に身を委ねるか、それとも兄と戦うか?剣を置けば不名誉、そして死罪が待つのみ。真犯人を見つけるために死ぬわけにはいかないと考えたヤスオはヤイチロウと戦うことを決め(英語ページ)、彼はその手でヤイチロウを斬り殺します。


ヤイチロウの前にひざまずくヤスオ

この物語の最初のバージョンでは、2人の兄弟が戦うことはありませんでした。その代わり、ヤイチロウはヤスオの無実を知り、無実の罪を着せられた弟と戦うよりも、自らの剣で命を絶つことを選択します。「ですが最終的には別の結末を採用することになりました。」とQAリードのJoe “ManWolfAxeBoss” Lansfordは言います。「なぜなら、この結末は世界中のプレイヤーの誰にとっても理解しやすくて魅力的なものだとは思えなかったからです」この物語は過去の日本の切腹を想起させますが、世界的に認知されているとはいえず、誰もが共感できる物語ではありません。そして、決闘の方が自決よりもよりクライマックス感のあるエンディングになります。


赦されざる者


浪人ヤスオの習作

コンセプトアーティストのTrevor “TrevolverOcelot” Claxtonが浪人のコンセプトアートを制作した時、彼はヤスオの衣装に旅の過酷さを反映させました。ヤスオの開発チームはこれを気に入りましたが、彼らがチーム外の人たちにアートを見せたところ、意外にも好意的な反応は返ってきませんでした――ヤスオのバックストーリーを十分に理解していなければ、衣服がボロボロのキャラクターからは良い印象を受けなかったのです。このアートには彼の旅の過程が反映されていましたが、初めて見る人は、くたびれた侍をかっこいいとは思いませんでした。

Trevorはアートを描き直し、明るいトーンにして(もう足枷はありません)、より伝統的な見た目の侍にしました。「基本に立ち返り、最高にかっこいい侍を描いてやろうと考えました。結果的に、より自然に感じられるキャラクターになりました」と彼は言います。

ヤスオは音声でも同じ問題に直面していました。最初のレコーディングの彼の声はウィスキー焼けした年老いた男のような声で、ストーリー上は理にかなっていたものの、ヤスオの過去を知らない人にとっては魅力を感じられるものではありませんでした。そこで、あまり気味の悪い感じにならず、もっとキャラクターが身近に感じられるように、レコーディングセッションをすべてやり直しました(何度も)。

ヤスオのようにデザインチームがチャンピオンに深く入れ込んだ時は、余分に時間をかけて、そのキャラクターについて非常に細かい部分まで考えるようになります(時には仕事をしていないときでも)。そのようなキャラクターの深みをすべてのプレイヤーに伝えるのは大変です。深く掘り下げるプレイヤーなら物語の全容を把握できるでしょうが、それは一部の人たちだけです。「開発者の多くは、そのような細かい部分を表に出すように努力します。しかし、その労力を注ぐ価値がないと思えば、方向転換することもあります。ヤスオの外観が正にそれでした」とBradは言います。

おまけ:ヤスオはもう少しで別の名前になるところでした。“ヤスオ”という名前は50年ほど前の日本ではよくある平凡な名前だった(英語ページ)ので、剣の達人である侍にふさわしい強そうな名前ではないと考える人もいました(他のテレビゲームに登場する強そうな侍の名前としては、ミツルギやヨシミツなどがあります)。「ヤスオに決めた理由の一つは、この名前は彼が剣術学校で与えられたものだからです。ヤスオという名前には『安らかな者』というような意味があり、血気盛んな彼が、自らの性分を抑えられるように付けられたものでした」とJoeは言います。他の名前の候補にはポラー、ショウ、タチカゼ、ハヤテ、フウジン、ケン、ドク、フェン、セブなどがありました。

風の侍のコンセプトアートの習作


死は風のごとし…

ヤスオの開発が始まる1年ほど前、ゲームデザイナーのJoe “Ziegler” Zieglerは侍キャラクターのテスト用スキルセットを開発していました。このセットは敵にマークを付与することを中心にデザインされていて、通常攻撃が敵にマークを付与し、それを使って追加効果を与えるものでした(出血など)。この侍のアルティメットスキルは、直線的にダッシュして通り道にいたすべての敵をスタンさせ、最後に刀を鞘に収めると、全ダメージが一度に適用されるというものでした。

剣を鞘から抜き差しする長剣の使い手というイメージはヤスオのデザインにも引き継がれていますが…それだけです。古いスキルセットは以下の2つの理由から廃止になりました。

  1. ヤスオの大きな狙いは、使いこなすには高いスキルが必要で(剣の達人である侍)、ダメージ中心にビルドする(侍は人を斬るもの)、近接攻撃のキャリーを作ることにありました。強力な行動妨害のアルティメットスキルを持っているなら上手く戦闘を仕掛けられるでしょうし、上手く戦闘を仕掛けられるなら、当時でいうブルーザー風にビルドするはずです――バイバイ、インフィニティ・エッジ。
  2. 一見すると“風の侍”は2つの言葉を無理にくっつけたように感じます。ヤスオは剣を振って風を起こしたり、風の剣を使ったりするので、風と侍が関連していることは確かですが、その関係性をゲームプレイで際立たせることが必要でした。この2つの要素が一体となっていることにリアリティを感じさせるには、できる限り自由なデザインの余地を残しておくことが重要になります。

ヤスオ コンセプトアート

ヤスオのQは当初から使用するごとに効果が上昇するデザインが採用されていました。最初のバージョンでは、ヤスオが前方に刀を突きつけ、その後のバージョンでは攻撃範囲が扇状になり、最後には360度全方向に風で攻撃していました。別のバージョンでは、使用するごとに左右に攻撃していました。ヤスオが攻撃すべきタイミングと下がるべきタイミングが明確になるので、スタックのシステムを用意しておくことは重要でした。

Qがスタックする、それはすなわち、ヤスオのダメージは戦闘を通して上昇していくことを意味します。彼は闇に潜んで敵を倒し、再び闇の中へと消えていく忍者ではありませんので、集団戦で敵にダメージを与えている間も死なずにいる方法が必要です。過去には、トリンダメアの「不死の憤激」や旧フィオラのアルティメットスキル、フィズのトロール棒など、ほぼ無敵の状態を与えることでこれを実現していました。しかし、ヤスオの場合は少し違っていました――風殺の壁です。

「この線の向こうの敵からはダメージを受けない、というような空間を限定した無敵システムの方が、ゲームプレイに幅が生まれると思ったんです」とBradは言います。さらに、これによってヤスオは戦闘でマークスマンに対処できるようになります。避けられない攻撃を安定して当ててくるマークスマンは、近接攻撃のキャリーにとって大きな脅威となります。風殺の壁があれば(これはテーマにも合っています)、敵をあっという間に倒せない状況下でも集団戦に参加できます。

信じられないかもしれませんが、当初、ヤスオは集団戦も得意とする近接ファイターとしてデザインされていました。彼のノックアップを中心としたアルティメットスキルは、風を操る能力を披露すると同時に、激しい集団戦で味方チームに貢献できるように作られたものでした。「彼がスプリットプッシャーになるなんて思ってもいませんでした。リリースされてからしばらくの間は、彼は集団戦に参加できる初の近接攻撃チャンピオンだったのです――プロの試合でもです」とBradは言います。

だとしたら、いったい何が起こったんでしょうか?


うつけものにつける薬はない…


コンセプトアート、最終段階

現在、ヤスオはサモナーズリフトでもっともネタにされてやすいチャンピオンであり、もっとも多くバンされるチャンピオンでもあります。世界はいつの間にか「ヤスオのためにノックアップだらけのチーム構成にしようよ!」から「ああ、ヤスオがひたすら1v5でスプリットプッシュするよ」になってしまいました。

問題の一つは、ヤスオはトップレーナーではなく、ミッドレーナーを想定してデザインされていたことです。開発者たちはトップレーンのヤスオはゲームバランスを崩してしまうと考えていました。ヤスオは遠隔攻撃のチャンピオンに対しては攻撃に出るタイミングが決まっていて(Qがスタックして「風殺の壁」が利用可能な時)、それができない時間帯は守備的なプレイを強いられます。相手が近接攻撃のチャンピオンなら、これらのスキルを利用できるかどうかはあまり問題にならないので、常時攻撃的なプレイが可能になります。それに…ほとんどのトップレーンチャンピオンは近接攻撃チャンピオンです。

さらに、ヤスオがリリースされた時は、最初にQを最大までレベルアップさせるのが一般的でした。ミッドレーンでウェーブをクリアするのに必要なダメージを得るためであり、そのためEを最大まで上げることはありませんでした。その後、何度もバランス調整の変更が行われ、最近のヤスオプレイヤーは最初にEを最大まで上げるのが一般的です。これによってヤスオは機動力が高まり長いレーンでもスプリットプッシュがしやすくなります――Qを最大に上げることによるウェーブクリアは得られませんが、トップレーナーならあまり問題になりません。この変化にファントムダンサーなどの攻撃力アイテムへの変更が組み合わさり、ヤスオは1対1のモンスターになりました。

これらの変更は個別に見れば納得のいくものですが、すべてが合わさるとヤスオをコンボ重視のミッドレーナーから、ソロでスプリットプッシュするトップレーナーに変えてしまいます。「個人的にはトップレーナーのヤスオは好きではありませんし、LoLのバランスを考えても、いいものだとは思いません」とヤスオのデザイナーであるBradは言います。将来行われるヤスオへの変更では当初からの狙いである、素早い「風」の侍を操るというテーマは維持しつつ、対戦相手がヤスオを攻撃すべきタイミングを明確化することになるでしょう。


4 months ago

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