秩序と混沌をアニメーションに

bananaband1tによる

レジェンダリースキンに携わるアニメーターが行う、「既存のチャンピオン用に新たなアニメーションを作成する」という仕事は、ときに困難を伴います。その難しさの程度は多くの場合、対象となるチャンピオンがどれくらい古いかよって左右されます。遠い昔に作られたチャンピオンであれば、アニメーションの見た目を改善すること自体は簡単なものの、往々にしてチャンピオンのデザインセットアップが時代遅れです。逆に新しいチャンピオンの場合、アニメーションは高品質であるものの、それらは複雑で、そこからさらに質を上げるのが難しい場合があります。

秩序の光リヴェンと混沌の闇ヤスオに命を吹き込むにあたっては、種類の異なる二つの挑戦をすることになりました。2体の開発は同時に行われましたが、彼らはリリースされた時期が異なることから、それぞれに独自のアプローチが必要でした。リヴェンのアニメーションでは、古いシステムの制約の中で作業をしながら、彼女をより現代的で、より優れた存在へと昇華させなくてはならず、ヤスオの新たなモーションでは、今でも十分に複雑な彼のアニメーションを、見た目も操作感もいっそう良いものへと作り変え…より混沌とさせなくてはなりませんでした。

そして、どちらの場合においても、リヴェンはリヴェンらしく、ヤスオはヤスオらしく感じられる必要がありました。


いい腕してるな、兄弟

レジェンダリースキンでは、たとえ見た目や動きに様々な追加要素があったとしても、それらが感覚的に同じチャンピオンのものであると感じられることがとても重視されます。客観的に見て純粋により品質の高い(よりなめらかで、綺麗で、カッコいい)新たなアニメーションを作ることは可能ですが、プレイヤーが「あまりにも違い過ぎる…」と感じるようでは、そうする意味がありません。操作に正確なタイミングや、高度な技術を要するチャンピオンのアニメーションにおいては、この課題がより顕著になります。「複雑なメカニクスを持つチャンピオンには往々にして、少数ながらも熱心なファンプレイヤー層が存在します。彼らは、少しでも違和感があれば必ず気付きます」とアニメーターのTom “Riot Whist” Robbinsは言います。

リヴェンとヤスオはどちらも、“誰もがそう思っているわけじゃないけど、やっぱり確実に操作が難しい”カテゴリーに入るチャンピオンです。この剣士たちを最大限に使いこなすには、完璧な操作タイミング、スキルと通常攻撃の交互使用、そしてモーションキャンセルが必要となります(最後のものに関してはリヴェンが特にそうです)。


秩序の光リヴェンの通常攻撃

追加の通常攻撃をスキルとスキルの間に挟めるようにするためには、秩序の光リヴェンと混沌の闇ヤスオの通常攻撃モーションはどこからどこまでなのか、明確にする必要がありました。どちらのレジェンダリースキンにも通常攻撃中に派手ではっきりとしたフレームが用意されており、分かりやすい予備動作と、剣を振る素早い動作、そして完了時の姿勢があります。これら3つのポーズによって、通常攻撃が始まるタイミング、命中するタイミング、そして終了するタイミングが明確になり――「ギリギリのタイミングで通常攻撃をねじ込むこと」が少しだけやりやすくなります。


混沌の闇ヤスオの通常攻撃

さらに、ヤスオの通常攻撃アニメーションは、クラシックスキンよりもきびきびとして感じられるように特別にデザインされています。ヤスオの通常攻撃アニメーションの各ポーズは普段よりもさらに強調され、剣を振るごとに、より大きく腕を伸ばして、体をのけぞらせています。その上、彼は力を最大限出し切るために、剣を両手で握っています。


光が闇を押し流す

リヴェンが開発されたのは、2週間に1回のペースで新チャンピオンがリリースされていた頃のことでした。リリースの間隔が短く、開発の各分野にかけられる時間が限られていたので、彼女のアニメーションはシンプルなものでした。しかしこの「シンプルさ」のおかげで、秩序の光スキンの開発にあたって彼女の既存アニメーションを改善する際に、開発者たちは様々な手法をとることができました。

実際、改善の余地があまりにも大きかったために、最終的にアニメーションはすべて新しいものを使うことにしました。この作業に際しては、まず始めに、秩序の光のキャラクターモデルのプロポーションがオリジナルのモデルからかけ離れていたことから、新たなリグを作るところから始めなくてはなりませんでした。リヴェンのベースモデルは脚が短く、少しデフォルメされていますが、秩序の光のモデルはスタイリッシュで背が高く、スーパーヒーローのような体型をしています。「『これはかっこいいぞ』と思う一方で、『この長い脚をどうやって動かせばいいんだろう?』と考えていました」とRiot Whistは言います。


秩序の光リヴェンとクラシックリヴェンのキャラクターモデル

一から開発を始めたにもかかわらず、リヴェンのバックエンドのデザインセットアップは、アニメーション作業の大きな制約となりました。リヴェンはLoLの中でもっとも多くのアニメーションをキャンセルできるチャンピオンですが、そこに使われている技術はかなり古いものです。「当初は、リヴェンが一部のアニメーションをキャンセルした時に移行アニメーションを用意したいと思っていたんですが、使われている技術が古いために断念しました」とRiot Whistは言います。キャンセルしたスキルの間に移行アニメーションを追加する方法の一つはバックエンドのデザインを変更することでしたが、これにはリスクがありました。リヴェンのゲームプレイを可能にしているのはいくつもの繊細なシステムであり、これに変更を加えれば一部のキャンセルが機能しなくなるか…あるいはまったく新たなキャンセルを生み出してしまう(英語サイト)可能性がありました。

リヴェンを壊してしまうリスクを冒したくなかったため、Riot Whistは彼女の核となるゲームプレイの部分に集中し、そこをできる限り改善することにしました。「彼女のやることすべてを、これまで以上に素晴らしく感じてもらえるようにしなければいけなかったんです」とRiot Whistは言います。


アルティメットスキルを発動するクラシックリヴェンと秩序の光リヴェン

改善の余地が大きかった部分の一つは、リヴェンのアルティメットスキル形態でした。アルティメットスキルの発動は、彼女が「かつての栄光を取り戻したこと」を示すものであるはずだったのですが、ベースモデルではこれが上手く表現できていませんでした。クラシックリヴェンでRを押すと、彼女は剣を掲げます。すると剣は修復され、大きくなり、輝き始めます。しかし、彼女が跳び回りながら敵をボコボコにしている途中でこれを行った場合、変化にはなかなか気付きにくかったのです。秩序の光リヴェンスキンの開発は、このテーマを納得がいくまで突き詰め、さらに彼女のゲームプレイメカニクスをビジュアル的によりクリアにする機会となりました。

アルティメットスキルの使用中は、黄金のキャラクターモデルと輝くビジュアルエフェクトによって、秩序の光リヴェンの全身が人を超越した姿に変わります。Riot Whistはアルティメット形態時のみのユニークな通常攻撃アニメーションを作成することも考えましたが、これはゲームプレイの観点から見るとあまりいいアイデアとは言えませんでした――追加で3つの通常攻撃アニメーションを覚えなくてはいけないというのは、リヴェンにとっても彼女の大剣で引っ叩かれている相手にとっても少し荷が重すぎるように思えました。そのかわり、Riot Whistは「追放者の剣」が有効になっている間の走るアニメーションをより攻撃的なものにしました。「これによって、彼女が茂みの中でアルティメットスキルを使ってからあなたに向かってきても、“くらったらかなり痛い”形態であることが以前よりもはっきりと分かります」とRiot Whistは言います。


アルティメットスキル前と最中の秩序の光リヴェンの走りアニメーション


闇が光を引き裂く

混沌の闇ヤスオはリヴェンと異なり、アニメーションのうち、新規のものは約半数に留まっています。これは主に、彼が比較的新しいチャンピオンであることが理由です。彼のアニメーションは今の基準から見てもかなり高品質であり、一部のアニメーションは非常に複雑です。実際、ヤスオに使われているアニメーションサイクルは、ゲーム内で最も複雑なものの一つであり、ぱっと見ただけではわからないかもしれませんが、ヤスオが剣を抜いたり収めたりする動作の裏では、内部で非常に複雑な処理が行われています。


待機中および走っている最中に剣を鞘に収めるクラシックヤスオ

ヤスオは戦闘を開始すれば剣を抜き、戦闘が終わるとすぐに剣を鞘に収めます。この動作に複雑な処理が必要となっている理由は、ヤスオは走っている時でも、立ち止まっている時でも、この2つの状態の間を移行している時でも、常に刀を鞘に収められるようになっているからです。常に完璧に揃っていなければいけないシークエンスがいくつか存在しており、これが揃わなければ、彼の胴体、腕、脚の位置がズレてしまいます。

混沌の闇ヤスオは剣を両手で握っているので、このアニメーションシークエンス全体を作り直す必要がありましたが、そのためにはアニメーターが長い時間をかけなければいけません。


待機中および走っている最中に剣を鞘に収める混沌の闇ヤスオ

そこで、ヤスオのアニメーションをすべて一から作り直す替わりに、シニアアニメーターのDrew “sandwichtown” MorganとMatthew “MIXX3R” Johnsonは混沌の闇ヤスオの、混沌とした、力強い性質がもっとも映える部分に注目することにしました――たとえば、両手で剣を扱う部分です。しかし、ヤスオのゲームプレイは正確なタイミングが鍵となっているので、彼の混沌とした性質をうまく表現するには、少し工夫をこらす必要がありました。

彼らが取った方法の一つは、自由にアニメーションを適用できる6本の“突起物”をヤスオの体に付け加えるというものでした。「突起物は非常に暗い色なので、シルエットから受ける印象の変わり方は控えめですが、悪魔というテーマを盛り込むにはいい手法だと思えました」とsandwichtownは言います。突起物には様々なアニメーションが用意され、エモート中、待機中、攻撃中に突き出てくるようにされました。


混沌の闇ヤスオの待機アニメーション中に出る突起物

多くのヤスオのアニメーションは一瞬で終わりますが、アルティメットスキルのアニメーションは比較的長いので、工夫をこらす余地がありました。「ヤスオのアルティメットスキルは非常に目立つものにして、劇的な印象を与えられるようにしたいと考えました」とsandwichtownは言います。ベースモデルのアニメーションでは、ヤスオは空中で対象を素早く何度も斬りつけますが、実際にダメージが適用されるのはアニメーションの終了時です。「ダメージが最後に入るというこの仕様から、混沌の闇スキンのアルティメットでは、一つの長い溜め動作を行ってから剣を振るというアイデアを思いつきました。これならとても力強く感じられますし、ゲームプレイも正確に反映させられます」とMIXX3Rは言います。

MIXX3Rとsandwichtownはベースモデルのように複数回斬りつけるアニメーションのアイデアもいくつか試してみましたが、どれも巨大な一撃を繰り出す満足度と、それが与える強烈な印象には及びませんでした。


クラシックのヤスオと混沌の闇ヤスオのアルティメットスキル


レジェンダリースキンのこれから

リリースされたレジェンダリースキンのほぼすべてにおいて、そのチャンピオンの一部(またはすべて)のアニメーションがアップデートされてきたために、レジェンダリースキンには新アニメーションが用意される、というのが一般的な認識となっています。しかし、今後新しいチャンピオンたちに対してレジェンダリースキンを作るようになれば、これが難しくなるかもしれません。新しいチャンピオンのアニメーションは現状でも十分に洗練されており、さらなる改善を施す余地はほとんどなく、すでに多彩な(そして往々にして複雑な)アニメーション使われています。そのような規模の新たなアニメーションセットを作成するには多くのリソースを割く必要があり、苦労に見合うほどの大きな成果が得られない可能性があります。「新たなアニメーションが、単に「違う」というだけで、「より良い」とは感じられないなら、それを作ることに意義はありません。」とMIXX3Rは言います。「そうなった時、私たちはどうすべきなのでしょうか?」

そのような状況が現実のものとなるのはまだ先ですが、アニメーションの観点から見て、困難が生じてくる過渡期のチャンピオンの一例がヤスオであり、その時はいずれやってきます。新アニメーションを作る際に取りうる一つのアプローチとしては、秩序の光リヴェンの宙に浮いての疾走や、混沌の闇ヤスオの両手での剣さばきなどの、「大きくて派手な動きを追加するのではなく、スキンが持つテーマ性を細かな部分で際立たせていく方法」を探ることが考えられます。

いずれにしても、誰もがよく知り、愛してやまないチャンピオンたちのために、アニメーターたちは新たな動きを生み出し続けていくのです…今回のヤスオやリヴェンのように。


1 week ago

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VS. 2017, Yasuo, Riven